2014 Fiscal Year Annual Research Report
韓国における日系新宗教受容に関する宗教社会学的研究-天理教を事例として-
Project/Area Number |
14J03718
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
陳 宗炫 東北大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 日系新宗教 / 天理教 / 韓国 / 反日感情 / 海外布教 / ナショナリズム / 文化変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は、韓国における日系新宗教の受容を、天理教を事例としながら研究を進めている。韓国人信者を中心に研究を進めたが、天理教教会本部(以下、教会本部)及び天理教韓国教団(以下、韓国教団)の韓国社会への布教戦略、天理教という日系新宗教に対する韓国政府(主に政策)・メディア・信者と非信者といった韓国社会との関連を含めて総合的に分析した。 第二次世界大戦後(以下、戦前・戦後)における個人の入信動機や信仰生活を取り上げたが、戦前のことを含めた形で聴き取りを行った。戦前に入信した韓国人信者は死亡している人が多いため、その子世代である二・三世代の信者から親の信仰について話を聞いており、二・三世代当人の心情を聴くことによって信仰継承問題も取り扱った。韓国人信者は近年急激に減少しており、親の信仰が受け継がれることが少なくなっている。信仰継承問題については個人というミクロレベルとともに、高度経済成長を経験した韓国の社会変動との関連というマクロレベルでも分析を行った。教会本部と韓国教団の布教戦略はメゾレベルとして想定した。韓国教団は教会本部と韓国社会の媒介役を果たすという仮説に基づいて調査を進展させた。 これまで研究対象としていた韓国教団は教会本部との関係を重視した。一方、反日感情に対応してナショナリズムを提唱しながら分裂した「大韓天理教」という教団が韓国にある。従来、時間の制約により射程に入れることができなかったが、大韓天理教も調査対象にした。このことによって、本来の教えと、国家・民族・文化という諸要素との衝突や葛藤、融合の姿をより詳しくみることが期待できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査を行っている報告者は、天理教教会本部(以下、教会本部)と天理教韓国教団(以下、韓国教団)と築いた信頼関係を維持しており、順調に調査を進めている。従来の研究では、主に文献資料と単発的なインタビューをもとに分析を行ったが、現在、短期・中期の参与観察を行い、報告者の以前の研究方法では習得できなかった資料を獲得している。さらに、研究成果を四回にわたって学術大会・研究会で発表しており、発表の場で得た批判・意見を参考にしながら研究をすすめている。その結果は一本の論文としても形にしている。 また、これまでは韓国教団発行の機関誌における記事の一部を資料として扱ってきたが、本年度からは同機関誌の全記事内容、教会本部における韓国教団関連記事、さらには韓国の諸新聞における日系新宗教関連記事を総合的に分析している。この作業によって、教団内部の観点に集中してきた研究から、教団外部の観点を加えることが可能になり、より客観的な研究を行っている。 教会本部と韓国教団を対象とした研究はいくつか先行研究があり、報告者も三年間研究しているため、韓国における日系新宗教の布教戦略・現地化の様態、反日感情との連関といった点がある程度明らかになっている。しかし、世界宗教を目指して教会本部と決別し、自主教団として独立した大韓天理教に関しては、宗教の「世界宗教化」として好例であるにもかかわらず先行研究がほぼ皆無である。大韓天理教も射程に入れている報告者の研究は独創性が期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度から研究対象としている大韓天理教は、天理教教会本部(以下、教会本部)・天理教韓国教団(以下、韓国教団)とはほとんど交流がなく、敵対といってもよいほど警戒している。三箇所をすべて研究対象とする報告者は、研究者として中立的かつ客観的な立場を保持することが必要とされる。些細なことより誤解が発生し、研究対象間の対立や葛藤を招く恐れがあるからである。報告者は、それぞれの教団において研究の目的と意義を事前に説明した上で協力を得ており、研究倫理の遵守を約束している。とりわけ、研究上の価値があっても、個人のプライバシーや教団の立場に被害を与える可能性がある資料の使用に関しては事前に説明を行って理解を得ており、そうでなければ使用していない。今後も細心の注意を払い、研究を続けるつもりである。
|
Research Products
(5 results)