2014 Fiscal Year Annual Research Report
血液凝固抑制因子抵抗性に起因する新規血栓性素因の検索と分子病態解析
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14J03741
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村田 萌 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | アンチトロンビン抵抗性 / トロンビン / プロトロンビン異常症 / 遺伝性疾患 / 血栓症 / 一塩基置換 / ミスセンス変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
所属研究室にて最近発見されたアンチトロンビンレジスタンス(ATR)は、重篤な血栓症を引き起こすリスクとなる遺伝性プロトロンビン異常症であるが、この新たな血栓性病態となるATRの検出は既存の臨床検査法では容易にはできないことから、アンチトロンビンによるトロンビンの不活化制御動態を解析することにより、このAT-Rを比較的容易に検出できる臨床検査法を開発した(Murata et al.: Thromb Res. 2014)。今年度の本研究では、ATR検出検査法の改良を進め、実臨床での実用化を視野に入れた改変を行うため、より入手しやすいウシ由来プロトロンビンアクチベータへの変更を行った。さらに、多検体同時処理やスクリーニング検査としての迅速な実施を可能とするため、実際に病院の臨床検査室で広く使われている自動凝固検査機器への最適化を行い、3機種でのATR検出が可能となった。本法を用いて、これまで原因不明とされてきた特発性血栓症の患者解析を行い、新たなATR症例を2家系検出し、遺伝子解析の結果から、セルビア型のプロトロンビン変異(c.1787G>A, p.Arg596Gln)を同定した。また、ATRの病態をさらに詳細に解明することを目的に、同様な機序でATRを来たし血栓性素因となり得る、既報のATR変異と同じくNa+結合領域に位置し、トロンビン・AT複合体形成への影響が懸念されるアミノ酸をターゲットとし、プロトロンビン遺伝子の一塩基置換によるミスセンス変異体のATR候補検索を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたAT-R検出法の改良とAT-Rスクリーニング検査の実施は、プロトロンビンアクチベータの変更と3つの自動凝固検査機器への最適化を進めることができ、予想以上に進めることができた。さらに、この最適化したATR検出検査法を用い、新たなATR症例を検出することができた。他のATR候補変異解析では、作製したすべての変異体についてATRの程度の把握が完了し、凝固活性の比較を開始した。ATRマウスモデルの作製解析は、ヘテロマウスの作製まで完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては、プロトロンビンアクチベータを変更したATR検出法について、自動凝固検査機器への最適化をさらに進めるとともに、引き続き原因不明の静脈血栓塞栓症の患者血漿検体のATRスクリーニングを実施し、静脈血栓塞栓症におけるATRの把握とその頻度を明らかにする。また、ワルファリン以外の抗凝固薬が本測定系に及ぼす影響について順次確認する。作製したATR候補の変異型リコンビナントプロトロンビンについて、それぞれのミスセンス変異体での血栓症発症リスク検索を引き続き行う。さらに、コンピュータソフトを用いたタンパク立体構造解析技術を取り入れ、新たなATR血栓性素因の候補変異解析を行う。平成26年度に作製したヘテロマウスの交配によりホモマウスの作製を試み、R593L変異プロトロンビンのマウス発生過程における影響を観察する。さらに、ヘテロマウス(生まれた場合はホモマウス)において、血栓形成能の定量、各種抗凝固薬の投与における各血栓形成能を観察し、血栓性素因モデルマウスとしての有用性を検討する。
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Research Products
(6 results)