2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J03745
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 悠 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ラフパス / ラフ積分 / ラフ微分方程式 / ラフパス解析 / 分数階微分 / 分数階微積分 |
Outline of Annual Research Achievements |
Lyons(1998)により創始されたラフパス解析の理論は,ブラウン運動の見本路のような滑らかさの度合いの低い関数に関する微積分学の理論であり,確率微分方程式や確率偏微分方程式など,確率解析の研究に有用であることが知られている.現在では,Lyons(1998)による元来の方法と異なる方法でラフパス解析を記述する試みは幾つかあるが,本研究課題である分数階微積分に基づく方法もそのような試みの1つで,ラフ積分と呼ばれるラフパス解析における線積分概念の定義に特徴がある.通常のラフ積分の定義は補正されたリーマン和の極限として与えられるが,分数階微積分に基づく方法では分数階微分作用素を用いたリーマン積分として定義される.昨年度までの結果から,分数階微積分に基づく定義は,幾何学的ラフパスと呼ばれる典型的なラフパスに対して,Lyons(1998)によるラフ積分の第1レベルパスと等しいことが分かっており,分数階微分作用素を用いた極限移行を介さない明示的な表現式は,ラフ積分に限らず,ラフ微分方程式と呼ばれるラフパス解析の微分方程式概念に対しても,より簡明な取扱を可能にすることが期待される. 本年度は,昨年度に引き続き,分数階微積分に基づいたラフパス解析の研究に取り組み,昨年度に得られた成果である,Gubinelli(2004)によるラフ積分に対する分数階微分作用素を用いた積分表示を用いることで,Gubinelli(2004)によるラフ微分方程式の定式化に沿う形で,ラフ微分方程式の解の存在と一意性に関する結果を得た.この結果により,分数階微積分に基づいたラフパス解析の枠組においても,Gubinelli(2004)によるラフ微分方程式の理論展開が可能になり,本研究の先行研究であるHu-Nualart(2009)によるラフ微分方程式の定式化と比べて,より簡明な定式化を実現できたと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主な研究目標は「ラフ微分方程式の分数階微積分に基づく定式化」であった.研究実績の概要で述べた通り,分数階微積分に基づいたラフパス解析の枠組においても,Gubinelli(2004)によるラフ微分方程式の取扱を可能にし,Hu-Nualart(2009)によるラフ微分方程式の定式化と比べてより簡明な定式化を実現したことから,本年度の主な研究目標は達成できたと考えている.以上のことより,本研究はおおむね順調に進展していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
例えば,Lyons(1998)によるラフ積分の第2レベル以上のパスに対する分数階微分作用素を用いた積分表示の導出,Lyons(1998)によるラフ微分方程式の分数階微積分に基づく定式化,非幾何学的ラフパスに対するラフ積分との整合性など,分数階微積分に基づいたラフパス解析の理論には,これまでも取り組んできたが解決できていない基本的問題が幾つも残っており,未だ捉えきれていない重要な数学的構造があると考えている.そのような基礎理論の構築における基本的問題に取り組むことは,本研究の今後の進展に繋がりうる意義ある試みだと考えており,今後も分数階微積分に基づいたラフパス解析の基礎理論の研究を進めていく方針である.また,基礎理論の研究と並行し今後は本研究の応用にも取り組む予定である.
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Research Products
(3 results)