2014 Fiscal Year Annual Research Report
飼料タンパク質由来ペプチドがニワトリの生理機能に及ぼす影響
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14J03779
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
伊藤 謙 岩手大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 小麦グルテン / 高分子ペプチド / アミノ酸 / 腸管吸収 / 小腸上皮細胞 / 線維芽細胞 / フィーダー細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
飼料タンパク質由来ペプチドの吸収機構を分子レベルで調査するためには、小腸上皮細胞を用いたin vitroでの試験が必要不可欠である。しかし、小腸上皮細胞の初代培養は、未だ培養条件が確立されていない。近年、フィーダー細胞としての筋線維芽細胞が小腸上皮幹細胞を長期間維持することが報告された(Lahar N et al., PLoS ONE, 6: e26898. 2011.)。そこで、フィーダー細胞としてニワトリの線維芽細胞を用い、ニワトリの小腸上皮幹細胞の維持が可能か否か調査した。また、培養液中の牛胎児血清(FCS)濃度が小腸オルガノイド形成に及ぼす影響も調査した。その結果、フィーダー細胞として線維芽細胞を用い、培養液中にFCSを20%添加することで、オルガノイドの長期間培養が可能であることを示した。以上の成果を日本家禽学会2014年度秋季大会で口頭発表し、優秀発表賞を受賞した。 これまでに、分子量毎に分画した小麦グルテン消化産物をニワトリへ経口投与し、腸管からのアミノ酸吸収に及ぼす影響を調査したところ、高分子ペプチドを含む画分が腸管からのアミノ酸吸収を促進したことが明らかとなった。この結果を査読論文として投稿しており、現在、二回目の再審査を行っているところである。さらに、アミノ酸吸収を促進したペプチドのアミノ酸配列を予測するため、BLAST検索を用いてニワトリが分泌するホルモンと類似するか否か調査したが、ニワトリの分泌するホルモンと類似するぺプチドは検出できなかった。 近年、食事由来の高分子ペプチドが消化されずに血中へと移行することが報告されている。そこで、小麦グルテン消化産物由来の高分子ぺプチドが腸管から吸収されるか否か調査するために、小麦グルテンのポリクローナル抗体をニワトリを用いて調製し、ウェスタンブロットにより検出を試みたが、抗体がニワトリ血中タンパク質と非特異的に結合し、血中の小麦グルテンぺプチドを検出することができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小腸上皮幹細胞維持因子を調製し、培養液中に添加することでニワトリの小腸オルガノイドを調製する予定であった。しかし、フィーダー細胞として線維芽細胞を用いることで、小腸上皮幹細胞維持因子の添加無しに小腸オルガノイドの形成を可能にした。また、小腸管腔内から血中へと移行する高分子ペプチドの検出をHPLCからウェスタンイムノブロット法に切り替えた。その結果、小麦グルテンと結合する一次抗体が非特異的にニワトリ血中タンパク質と結合してしまい、血中の小麦グルテン由来の高分子ペプチドを検出することができなかった。 また、腸管からのアミノ酸吸収を促進するペプチドの予測を行うため、ニワトリが分泌するホルモンのアミノ酸配列と類似する小麦グルテン由来ペプチドをBLAST検索を用いて行ったが、該当するペプチドは無かった。 以上より、多少の推進方策に変更があったが、おおむね当初の目的を達成し、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において、フィーダー細胞として線維芽細胞を用いることで、ニワトリ小腸上皮細胞のオルガノイド形成を可能とした。当初の研究計画では、マイクロマニュピレーターを用いてオルガノイド中へサンプルを投与する予定であったが、投与自体が技術的に困難であることが予想された。また、物質輸送試験に用いるには多数のオルガノイドを必要とするため、オルガノイドではなく、小腸上皮細胞をシート状に培養することが必要となった。そこで今後、培養液中の組成およびウェルに塗布する細胞外マトリクスの種類を検討し、小腸上皮細胞がシート状に培養可能か否か調査する。シート状に培養可能な場合、トランズウェル上で小腸上皮細胞を培養し、上皮細胞膜間電気抵抗地を測定することで、タイトジャンクション形成が行われているか調査する。その後、細胞からタンパク質を抽出し、ウェスタンイムノブロット法を用いてタイトジャンクションタンパク質の量を測定する。 これまでに、血中へと移行した飼料由来の高分子ペプチドがニワトリの生理機能へ及ぼす影響について調査した報告は無い。そこで、経口投与した飼料由来ペプチドが腸管から吸収されるか否かウェスタンイムノブロット法を用いて調査したが、調製したニワトリ由来の抗小麦グルテン抗体では、ニワトリ血中タンパク質と非特異的に結合するため血中へ移行する小麦グルテン由来高分子ペプチドを検出することが困難であることが示唆された。そこで今後は、ラットを用いて小麦グルテンの一次抗体を調製後、再度ウェスタンブロットを行い、吸収される小麦グルテン由来高分子ペプチドを検出する予定である。また、特定した小麦グルテン由来高分子ペプチドの生理機能を調査するために、 [125I]で標識した小麦グルテン高分子ペプチドをニワトリへ経口投与し、血液および臓器中の放射能を測定することでぺプチドが作用する臓器を特定し、ぺプチドの生理機能を予想する。
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Research Products
(1 results)