2014 Fiscal Year Annual Research Report
フランス第三共和政における議会政治史研究-「選出職」と「議会政治」の政治文化-
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14J03811
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷口 良生 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | フランス史 / 近代史 / 議会史 / 議員 / 政治文化史 / 議会政治史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「議会共和政」と位置づけられてきたフランス第三共和政の議員に着目し、その議会政治をつかさどる政治文化を明らかにするものである。本年度は、研究計画のうち通時的な側面である議員の政治的経験の問題を前提に、下院における議会活動に焦点をあてた。その際に検討対象としたのは、第三共和政前期において大きな問題となった「常任委員会体制」の導入(1882-1902年)をめぐる議論であった。 まずは、それをめぐる言説の分析を行い、この導入をめぐる議論において、議員のキャリア形成が多元的である「古い議会政治の規範」と、一元化された議員のキャリア形成を核とする「新しい議会政治の規範」の存在を確認した。この成果の一部は、「2014年度広島史学研究会大会西洋史部会」にて口頭報告を行った。 その後、「常任委員会体制」導入をめぐる議員の投票行動の分析に着手した。その結果、この導入過程は、政体の急進化と、世代交代にともなう議員の民主化を背景とした、「古い議会政治の規範」に対する「新しい議会政治の規範」の弁証法的な形成と浸透の過程であったことを明らかにした。このような一元的なキャリア形成規範の誕生は、議員の民主化、急進化、世代交代を背景とした議員の職業化の発露であったのである。 くわえて本年度には、政治家を主体とした日本におけるフランス史の最新の研究に対する書評(『史林』97巻4号)と、数年前に物故したフランス史の大家の代表作に関する小論(『西洋史学』254号)を執筆し、両者とも、本研究の遂行において重要な示唆を受けるものであったと評価している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、当初計画していた方策をやや変更して対象に迫ることとなった。そのため、史料調査およびその読解に予定以上に時間を割くこととなり、結果として研究成果を論文のかたちで公表するという本年度の最大の課題を達成することができなかった。そのため、「やや遅れている」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、本年度の遅れを取り戻すべく、研究成果を論文にまとめることから着手する。その後、フランスでの在外研究に従事し、これまでの国会議員の研究から離れて、地方議会議員に着目する。地方議会議員に関連する諸史料の調査と読解を進めることが、当面の課題となろう。
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Research Products
(3 results)