2015 Fiscal Year Annual Research Report
ベラルーシ共和国における言語状況及び言語政策に関する総合的研究
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14J03848
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
清沢 紫織 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ベラルーシ語 / ロシア語 / 言語政策 / 言語法 / 国家語 / 言語意識 / 言語継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度からの研究成果についての論文投稿と学会発表、次年度に控える本格的な博論執筆のための研究テーマへの全体的なアプローチ方法の再検討、アウトリーチ活動が主な実績である。 まず、前年度から継続してきた研究成果については、昨年2月(前年度)にタリン大学での国際学会にて口頭発表を行った「ベラルーシ語の世代間継承に関する若者世代の言語意識」の内容を同大学の発刊する研究雑誌(スラヴ学研究: 若手言語・文学研究者のための研究論集)の第14号に投稿した。投稿した論文は既に査読を終え同雑誌への掲載が決まっている。また、修士論文より一貫して取り組んできた「言語法にみるベラルーシ共和国の国家語政策」については、その研究成果を12月にワルシャワ大学(ポーランド、ワルシャワ)で開催された国際学会(国際学術会議: 学術議論の中のベラルーシ)にて学会報告を行った。学会参加後は、報告内容をさらに論文としてまとめ、同大学から刊行予定の論集に投稿を行った(現在、査読結果待ちである)。 また、研究テーマについての全体的なアプローチ方法の再検討に関しては、問題意識を具体的に「標準ベラルーシ語の成立とその普及に関わる国家語政策の実態」に定め、その検討にあたって言語政策の3側面とされる言語の1. 実体計画、2. 地位計画、3. 普及計画の3つの観点から整理し問題の考察を進めることとした。 さらに、アウトリーチ活動として2月にはNPO法人「地球ことば村」より依頼を受け「ベラルーシのことば、人々、暮らし」というタイトルで講演を行った。また、昨年度より継続してきた日本人向けのベラルーシ語教育の活動の成果として日本初の実践的なベラルーシ語教材である『日本人のためのベラルーシ語入門I』をラムザ・タッチャーナベラルーシ国立大学准教授と共同執筆し、筑波大学グローバルコミュニケーション教育センターより刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、来年度からの本格的な博論執筆に向け、自身の研究テーマについて改めて全体的なアプローチ方法を見直しそれに伴う諸課題の整理を行った。その中で問題意識を具体的に「標準ベラルーシ語の成立とその普及に関わる国家語政策の実態」に定め、その検討にあたって言語政策の3側面とされる言語の1. 実体計画、2. 地位計画、3. 普及計画の3つの観点から問題の考察を進めることとした。今年度はこのうち、1および2を重点的に取り組んだ。 まず2に関しては、これまでは言語の法的地位の有り様に専ら着目してきたが、今年度はさらに、言語の法的地位そのもののみならずその国民の言語権との関わりについても考察を深めることができた。その研究成果については、12月にワルシャワ大学で開催された国際学会 (国際学術会議: 学術議論の中のベラルーシ)にて学会報告を行った。また報告内容は論文としてまとめ、同大学から刊行予定の論集に投稿を行った(査読結果待ち)。 1については、昨年度より継続してきたベラルーシ地域の言語状況史およびベラルーシ語の標準化をめぐる文献・資料の収集と精読をさらに進めた。関連する問題の複雑さから年度内に研究成果としての取りまとめには到達できなかったものの、同テーマについては夏期にベラルーシ本国にて開催された国際ベラルーシ研究セミナーにて現地のベラルーシ語史の専門家に研究相談を行い、継続してきた文献研究の取りまとめに関してその方向性を確定することができた。 以上のように、本年度は昨年度までの研究成果を生かしながらも問題へのアプローチ方法の再検討と課題の整理を行ったため、結果として昨年度計画していた研究計画とは変更が生じた部分もあったが、3年の研究計画全体からみた上での今年度に行わなければならない研究内容はほぼ予定通り進んでおり、今年度研究の達成度としてはおおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、これまでの研究経過を踏まえ、博論執筆へ向けた研究遂行の指針として研究テーマに関わる問題意識の軸を「標準ベラルーシ語の成立とその普及に関わる国家語政策の実態」と定めその検討にあたって言語政策の3側面とされる言語の1. 実体計画、2. 地位計画、3. 普及計画の3つの観点から問題の考察を進めることとしたが、それぞれについて以下のような推進方策を考えている。 まず「地位計画」に関しては、修士論文から一貫して取り組んできた「言語法にみるベラルーシ共和国の国家語政策」についての研究成果を基礎としながら「地位計画」の観点からの再考察を進めていく。その成果の一部については来年度6月に参加する日本言語政策学会第18回大会にて口頭発表を行う予定である(既に研究発表は受理済み)。 また「普及計画」に関しては昨年度日本スラヴ人文学会で口頭発表を行いその後論文としてまとめた「ベラルーシ共和国における教育分野における言語政策及び言語状況」を基礎にさらに考察を精緻化する予定である。この研究課題については、今年度タリン大学の研究雑誌で発表した「ベラルーシ語の世代間継承に関する若者世代の言語意識」に関する論文の成果、および今年度の現地調査を行ったベラルーシ語学校の訪問の成果と新たに入手した関連する法律文書の分析を合わせて考察をまとめていく予定である。 さらに「実体計画」については、昨年度から継続してきたベラルーシ地域の言語状況史およびベラルーシ語の標準化をめぐる文献・資料の収集と精読の成果を文献研究という形でまとめていく予定である。特に、ベラルーシ語の標準化に関しては、文献の精読と検討を進める中で言語純化主義に関わる問題が今日の言語状況に対し大きな影響力をもっていることが明らかとなってきたことから、同問題を中心とし考察を進めて行く予定である。
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Research Products
(6 results)