2015 Fiscal Year Annual Research Report
運動指令および体性感覚入力が脊髄反射回路の可塑的変化に及ぼす影響について
Project/Area Number |
14J03962
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
窪田 慎治 広島大学, 総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 脊髄反射回路 / 可塑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、運動トレーニングに伴う脊髄反射回路の活動性変化について検討を行った。脊髄反射回路は、Ia相反抑制回路、Iaシナプス前抑制回路の活動を測定した。運動課題として律動性関節運動課題を用い、運動スキルや運動課題速度など運動課題特性が、脊髄反射回路の活動性変化に及ぼす影響について検討を行った。結果として、Ia相反抑制は、運動速度が速い条件で運動を行った直後にその抑制量の増大を認められた一方、Iaシナプス前抑制は、運動速度に関係なく運動スキルを伴う課題後において抑制量の増大が認められた。したがって、Ia相反抑制回路の活動性変化には課題の運動速度が深く関与していること、Iaシナプス前抑制回路の変化は課題運動速度に依存せず、運動スキルを必要とする課題を行うこと自体が関与していることが示唆された。また、運動スキル課題後におけるシナプス前抑制の変化は、シナプス前抑制回路を構成する介在ニューロンの活動性が皮質脊髄路からの下行性入力によって変化することが関与していることが示唆された。 さらに、上記実験に加えて、下行性運動指令が脊髄反射回路の活動性変化に及ぼす影響を明らかにするため、被験者に運動イメージトレーニングを行わせ、そのトレーニング前後において脊髄反射回路の活動性変化について検討した。現在までの実験結果より、イメージトレーニングによって運動イメージ時の脊髄運動ニューロン興奮性およびIaシナプス前抑制量に増大が認められている。現在は、これらの結果をもとに、運動イメージ中の脊髄反射回路の活動が、下行性運動指令の内容(イメージする運動の内容)に応じて変化するのかについて確認するための検証実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、意識的な運動指令や運動に伴う体性感覚入力など運動制御に関与する要素が、脊髄反射回路の可塑的な変化に及ぼす影響に関して明らかにすることである。本研究課題は、実験1:運動イメージトレーニングによる介入を行った場合、実験2:Paired associative stimulation (PAS法)を用いて人工的にスパイクタイミング依存的可塑性を引き起こした場合、実験3:運動イメージトレーニングに感覚入力刺激を組み合わせた場合、実験4:実際に反復運動を実施した場合、以上4条件による介入実験から成り立っている。 平成27年度は、実験4に関する実験を実施し、運動トレーニングにおける運動課題の課題特性が脊髄反射回路の活動変化に及ぼす影響について検討を行った。また、実験1に関する実験を実施し、運動イメージトレーニングが脊髄反射回路の活動変化に及ぼす影響について検討を行った。現在は、実験1から得られた結果をもとに、下行性運動指令の内容(イメージする運動の内容)に応じて脊髄反射回路の活動が変化するのかについて検証実験を実施している。また、実験3に関しての予備実験の準備を進めている。 以上の結果を踏まえ、27年度予定していた実験内容を順調に達成することができていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究課題の推進方針としては、現在計測を行っている運動イメージトレーニングによる介入実験を完了させるとともに、実験3を行い、運動イメージに感覚入力刺激を加えた訓練介入が脊髄反射回路の活動変化に及ぼす影響について検討を行う。実験1および実験3の結果をそれぞれ比較することで、意識的な運動指令や運動に伴う感覚入力の有無が脊髄反射回路の可塑的変化に及ぼす影響について明らかにしていく。
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