2015 Fiscal Year Annual Research Report
「共感」が生みだす生態記号論的な「こころ」のメカニズムと「自己」の研究
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14J03999
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
佐古 仁志 立教大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 共感 / アブダクション / 自己 / 意味 / 移動 / 記号論 / 生態心理学 / 習慣 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ボトムアップなものとして環境と身体の相補性と、トップダウンなものとしての行動の予測などの両方を必要であると考え、生態記号論の観点から、ミドルアウトな手法で「こころ」および「自己(意識)」の問題を扱うことを考えている。その際、特に<共感>への注目が必要であることを提示し、<共感>についての研究を展開することが本研究の目的である。
本年度は後半から海外で長期研究を行なう予定であったが先方の都合などもあり、海外研究の予定は次年度へと繰り越した。しかし、それ以外についてはおおむね当初の計画通り研究を進め、研究の進展に伴う変更を含みつつ、国内および国際学会で発表を行なった。 <共感>研究を進めるなかで、本研究においてはその「意味獲得」の側面に注目することが重要であると考え、C・S・パースの「アブダクション」について共感との関係で研究し、N・グッドマンの「投射」への展開を示唆する発表を行なった。また、記号論と生態心理学との接合を試みる発表を行なうことで、国際的な展開のための基盤を築いた。さらに、実践的側面を展開する準備として生態心理学者たちと移動に関するグループ研究を進めている。
次年度に向けては、二つのことを開始している。「投射」研究を進めることで、<共感>と「自己」との関係を本研究の観点から展開すること、また、実践的側面の強い「移動」研究を進めることで<共感>と相補的な形で、よりすぐれた「自己」研究に関する成果が期待される。さらに、次年度後半からの海外長期研究のために海外の研究者と日程および研究についての調整を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画から、先方の都合などにより海外長期研究の時期を変更するという予定外のできごとはあったものの、その分当初計画していたよりも特に国内学会での発表を充実させることができた。そしてそれにともない「共感」から「投射」、さらには「自己」へといたる「意味獲得」という本研究の中心をなす重要なラインを発見することができた。 また、計画より早い段階で、本研究の実践的側面である「移動」研究について、国内の研究者とグループをなし、多角的な視点から展開することができた。 そのほかにも当初の計画では予期していなかった展開があったため、それらを含めて次年度後半では、海外へ渡航し、渡航先の研究者と交流を進めることで、本研究の予定以上の成果の達成が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画ではすでに行なっているはずであった、海外への渡航およびそこでの研究を今年度後半に行なう。それに伴いすでにある程度行なってはいるが、今年度後半に予定した研究を前倒しして進め、逆にその成果を海外での研究へと活かす。 また、国内・国際学会での発表を通じて重要性が確認された「投射」についての研究を進めることで、<共感>研究に新たな視点をもたらすことが可能になるとともに、その成果を海外で発展させることで、本研究に予想以上の成果をもたらすことになると考えている。
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Research Products
(4 results)