2015 Fiscal Year Annual Research Report
中性子過剰な超流動原子核における1粒子共鳴現象の解明とr過程中性子捕獲への応用
Project/Area Number |
14J04015
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小林 良彦 新潟大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 準粒子共鳴 / 対相関 / 中性子過剰核 |
Outline of Annual Research Achievements |
中性子過剰核における1中性子共鳴現象に対する対相関の効果を分析している。対相関は原子核の超流動性を生み出し、その超流動性によって、準粒子共鳴が起こると予言されている。我々は特に、準粒子共鳴の共鳴幅に対する対相関の効果を理論的に調べている。準粒子共鳴は、非束縛核子が束縛核子とCooper対を形成することによって生ずる。そのため、束縛核子の性質により、準粒子共鳴自体の性質を二つに大別することができる。それは、Fermi面よりも下の軌道起源の準粒子共鳴とFermi面よりも上の軌道起源の準粒子共鳴である。本研究では、前者をhole-like準粒子共鳴、後者をparticle-like準粒子共鳴と呼ぶ。 研究の中では、r過程中性子捕獲においても重要な役割を持つと期待されるp波の準粒子共鳴を分析対象として採用した。2014年度までに、対相関は、hole-like準粒子共鳴に対しては共鳴幅を狭める効果を持ち、particle-like準粒子共鳴に対しては共鳴幅を狭める効果を持つことが分かった。 2015年度は上記の性質を理解すべく、共鳴状態にある準粒子波動関数の分析を行った。準粒子の波動関数は、particle成分とhole成分の二成分から成り、それらが受ける対相関の効果を調べた。この分析からは、原子核付近に局在するhole成分が受ける対相関の影響が、共鳴幅の変化に対する主な寄与であることが分かった。そして、その振る舞いは、2014年度までに明らかにした性質とも矛盾しないことが分かった。 以上の研究成果は、論文にまとめ、Progress of Theoretical and Experimental Physics誌から出版した。 さらに、2015年度は、s波散乱に対する対相関効果の分析も行った。現在までに、s波散乱の散乱長と有効距離が受ける対相関効果の分析を行った。この分析により、従来の理論では説明できない性質が現れることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
p波準粒子共鳴の共鳴幅に対する対相関の効果を分析してきた。この分析により、対相関は共鳴幅を狭くする、という新しい対相関効果を見出した。それに加えて、その分析結果のメカニズムを、波動関数の性質を調べることにより、明らかにすることにも成功した。 その成果は、2014年度の成果と合わせて、原著論文にまとめ、出版した。原著論文の出版という形で、p波準粒子共鳴に関する研究成果をまとめられたことは大きな研究進展であった。 また、s波散乱に対する対相関効果の分析も進めており、従来の理論では説明できない性質があることを明らかにした。2016年度は、その分析と理解を試みる予定である。 以上のように、p波準粒子共鳴の分析結果とその理解をまとめ、論文出版できたこと、そして、次なる研究対象であるs波散乱に対する対相関効果の分析にも進展が見られるため、「おおむね順調に進展している」と自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度中は、p波準粒子共鳴の分析結果のまとめに加えて、s波散乱が受ける対相関効果の分析も進めた。特に、s波散乱の散乱長と有効距離が受ける対相関効果の分析を行った。この分析により、従来の理論では説明できない性質が現れることを明らかにした。 2016年度は、この性質の理解に取り組む。さらに、このs波共鳴が重要であろう実験データも理化学研究所の原子核実験施設RIBFから発表されているため、理論的な分析を通して、実験データの解釈にも試みる予定である。 そして、s波散乱の分析結果をまとめた後は、2015年度までのp波準粒子共鳴に対する分析結果と共に、それらを中性子捕獲現象の分析に役立てる予定である。
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Research Products
(4 results)