2014 Fiscal Year Annual Research Report
血沈現象の計算力学解析に基づく新しい血液検査チップの開発
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14J04025
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松永 大樹 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 赤血球 / 沈降速度 / 連銭 / 境界要素法 / GPU |
Outline of Annual Research Achievements |
1.沈降する赤血球一体の再配向現象)赤血球の連銭形成のメカニズムを明らかにすることが本課題で取り組むテーマの一つであるが,このメカニズムを正しく理解するにはまず赤血球一体の振る舞いを検証することが肝要である.本課題では赤血球一体の膜剛性/内外粘度比を変えて,その沈降挙動にどのような変化があるかを検証した.本課題では広いパラメータ空間にて解析を行ったが,全ての条件で赤血球は縦向き(長軸が重力方向,短軸が水平方向)へと徐々に回転し再配向した.ただしこの回転速度は条件に大きく依存し,赤血球の内外粘度比/膜剛性が小さいほど早く回転することを明らかにした.なお赤血球の100倍柔らかい条件まで広い範囲で解析を行ったがこの回転速度は膜剛性にほぼ反比例するオーダーである.またこの回転は非常に遅く数十分-数時間スケールの物理現象であることを示した. 2.球形カプセル二体の沈降現象)希薄化させた小さな赤血球体積率下でも二体の赤血球の連銭が確認できることが実験で知られている.二体の赤血球接着は血漿高分子による近距離の引力によって引き起こされるが,遠く離れた二つの血球細胞が近づくメカニズムは流体力学的作用であると考えられる.本課題ではこの流体力学作用を解析することを主眼に置き,解析する上で最もシンプルな問題設定として二体の水平に並んで沈降する球形カプセルの数値計算を実施した.現在まで二体のカプセルは沈降と同時にお互いに接近する速度を持つこと,また膜が柔らかいほど接近速度が速いことを明らかにした.この接近速度は二つのカプセル間距離rの関数となっておりマイナス2乗から3乗のオーダーで減衰することも同時に発見した.なお二体が近距離まで接近した場合は膜が大きく変形し,僅かに離れた位置で平衡位置を持つ.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度が始まる前は積み重ねの知見がゼロに等しい状態であったことを鑑みると長足の進捗と言え,研究計画から見ても当初想定したペースを上回る順調な実施状況である.また年度途中よりSaarland大学(ドイツ)へと留学しChristian Wagner教授と共同研究を実施しており,研究の新展開に向けて積極的な意見交換を行っている.従って当初の計画以上に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
連銭形成のメカニズム解明に向けて,今後は多数の離散状態の赤血球がどのような過程・メカニズムを経て連銭を形成するのかの解析を行う.この実施のため今後解決すべき数値計算上の問題としては,赤血球の接着を正しく表現するモデルを提案すること,また更なる大規模計算に向けて小さい時間刻みを回避する手法を開発することである.また数値計算で得られた知見を総合して血液チップの設計を予定している.
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Research Products
(16 results)