2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J04033
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
髙棹 健太 東北大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 新宗教 / 巫者信仰 / 東北地方 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、民俗宗教と新宗教とのかかわりを明らかにすることである。報告者は、宮城県仙台市に本部を置く大和教団を事例に研究を進めてきた。これまで、教団の発展と「巫女」の活動を、教団本部のほか、秋田県湯沢市、宮城県気仙沼市の教会を対象に実地調査を行ってきたが、今年度は新たに、大和教団の開祖と関係の深い宗教教団についても調査を実施した。宮城県石巻市にある三山大神教湯殿山神社において、聞き取り調査を行った。湯殿山神社を設立したのは、大和教団の開祖保積史子の弟である。この湯殿山神社では、現在巫業など神霊を降ろす宗教的職能者はおらず、宗教施設としての活動は、例祭などの月例行事や厄除けなどの祈願が主な活動となっているが、所属する宗教者が巫業を行うことで信仰圏を広げていった経緯がある。湯殿山神社の発展は、その巫業によりカツオ漁船の漁師達の依頼に答え、不漁の原因を言い当てるなどにより、帰依を集めたことによる。かかる巫業と漁村の信仰については、大和教団の気仙沼教会の教会発展と重なる部分も多く、巫者信仰と教団発展に関する重要な知見を得た。 湯殿山神社の聞き取り調査の他、教団発展と社会背景の考察を行った。大和教団では、依頼に応じて、中絶児・流産児の霊である「水子」との交流を行う霊媒を行っており、教勢展開において重要な役割を担っていることが、実施調査で分かっている。秋田県湯沢市にある秋之宮道場、仙台市大國神社などの教団施設において、水子供養について聞き取り調査を行い、教団の発展と水子供養の関わりについて研究をすすめた。 新宗教と民俗宗教の関わりについて研究を行うにあたり、宗教的職能者と依頼者との間に生み出される信仰形態と組織宗教が生み出す信仰形態の差異が如何に生まれるのかを一事例に留めるのではなく、アジアのシャマニズムの中で位置付けることの必要性が生じたため、シンガポールにおいて調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①巫者信仰との関係性について 民俗宗教と新宗教との連続性を考察するため、東北地方の巫者信仰についての調査を行っている。現在までの研究では、民俗宗教である巫者信仰を新宗教の基層として捉えていたが、新宗教教団の職員である「巫女」が民間巫者が20年以上前に亡くなり、不在となった地において教会を建て、巫業を行っている事例についての調査を行った。かかる事例は、民間巫者の減少が報告されている現在、新宗教が民俗宗教を補完することの証左であり、重要な知見である。 ②大和教団の教勢展開と社会背景 1970年代から1980年代にかけて、日本全土において水子ブームが発生した。大和教団では1970年代より水子供養をおこなっており、教団発展において重要な要素となっている。従来の研究では、中絶経験をもつ「母」に注目し、「母」と「子」の関係性のみ検討されてきたが、教団において水子供養をはじめ40年余りが経ち、供養実施者の死亡、高齢化が見られ、イエ単位で水子を供養している事例が見られる。このような事例は、水子をイエで供養するべき死者として捉えるものであり、水子供養研究において供養者の多様性を提示するものである。 ③海外における新宗教の進出と、民俗宗教者の活動 日本国内における巫者信仰と新宗教の議論を、東アジアにおけるシャマニズムと組織宗教の関わりの中で考察するため、そして、シンガポールでの調査を開始した。日本新宗教のシンガポール進出についての調査を行う一方、宗教的職能者についての調査を行った。ンガポールには、マレー系の宗教的職能者であるBomoh、華人系の宗教的職能者であるTang-kiなど多くの宗教者が活動している地域であり、宗教的職能者と組織宗教の関与については民族や宗教を超え行われているため、複合的な考察が必要であり、調査を継続する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
①教団の教勢展開に関する研究 新宗教と民俗宗教のかかわりをより明確に考察するため、現在までに行ってきた大和教団への調査とともに、教団と関係の深い宗教施設への調査を行う。この調査によって、大和教団の発展の様相を多面的に考察することが可能となる。大和教団の教勢展開については、教会ごとに巫業の需要などの特徴を持ち、その特徴は地域の民俗に影響を受けているため、実地調査とともに、各地方の民俗誌を参照する。 ②供養の多様性に関する研究 大和教団の行う儀礼、特に供養について検討するため、先祖供養とともに水子供養について、大和教団の教団文献を参考に、研究する。かかえる供養の様態については、他の宗教寺院とりわけ、水子供養やぽっくり信仰など大和教団の発展時期(1970年代から1980年代)に発生、ブームとなった新たな信仰との関わりに注視し、調査を実施する。 ③新宗教の海外進出と民俗宗教とのかかわりについての研究 シンガポールでの調査を継続し、巫者信仰と新宗教の議論を、東アジアにおけるシャマニズムと組織宗教の関わりの中で考察する。シンガポールにおける日系新宗教の進出とそれにともなう変容について、天理教、創価学会などの教会を訪れ、聞き取り調査を実施する。また、民間の宗教的職能者に関する調査では、シンガポール西部ジュロン地区を対象に、マレー系のBomoh及び華人系のTang-kiなどの宗教的職能者を中心に聞き取り調査を行う。
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Research Products
(4 results)