2015 Fiscal Year Annual Research Report
後期ハイデガーの思惟の解明-「否定的なもの」という概念に定位して
Project/Area Number |
14J04084
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木元 裕亮 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ハイデガー / フロイト / ヘーゲル / 否定性 / 精神分析 / 相互承認 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、ハイデガーのドイツ観念論との関わりに注目しつつ、「否定的なもの」ないし「否定性」についての問いを深めることを目的とするものであった。 しかし、昨年度以来、「否定的なもの」を巡る問いが最終的には人間であることの根本に常に根源的な「否定」の経験を見定めるという単調な結論に至りがちであることが明らかになってきた。そのことの反省の結果、「否定的」な「死の欲動」の働きを弱め、「肯定的」な「生の欲動」の働きを強めようとするフロイトの精神分析が重要な研究対象として浮かび上がってきた。本年度にはその成果の一部をフロイトの自我理論の再解釈という形で発表した。 さて、以上の展開の結果、本年度には「否定性」と「肯定性」への研究の方向性の分裂にどう対処するのかが重大な問題となった。本年度の本質的な成果ないし進展は、この二つを統合する方法をヘーゲルの『法の哲学』のうちに見出そうとする試みにある。その社会哲学的な部分、いわゆる「人倫」の章は、「家族・市民社会・国家」という三つの制度を中心に構造化されているが、それを人間の活動という視点からみれば、「愛・労働・戦争」という三つ組が得られる。ヘーゲルは人間の本質としての「否定性」が純粋に経験される場として「戦争」や「革命」を考えつつ、そのような「否定性」に貫かれた人間は、他者を「肯定」し他者に「肯定」されるという「相互承認」に向かうし、向かわざるを得ないと考えていたように思われる。この「相互承認」の二つの様態が「愛」と「労働」である。以上の着想に基づいて人間性における「否定」と「肯定」の契機を統合することをさらに模索する必要がある。本年度には、その着手点としてニクラス・ルーマンの『情熱としての愛』の読解を行った。今後はこのような大きな見通しに基づいて考えを進めつつ、それを具体的な研究成果とすることを試みたいと考えている。
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Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(1 results)