2015 Fiscal Year Annual Research Report
2座ピリジリデン配位子による高原子価遷移金属種の創製と応用
Project/Area Number |
14J04104
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉富 哲志 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ピリジリデン / カルベン / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ピリジリデンはピリジン骨格を有する1重項カルベンであり、従来のN-ヘテロ環カルベンよりも高い電子供与性を示すことが知られている。我々は、ピリジリデンのカルベン配位子としての潜在性に着目し、2,2'-ビピリジル配位子と等電子構造をもつ新規2座配位子を設計した。この2座配位子は遷移金属と錯形成した場合に5員環メタラサイクルを形成し、2つのピリジリデンの高い電子供与性によって非常に電子豊富で安定な化学種の創製を可能にする。また、配位子からの強い電子供与を受けた遷移金属は高原子価状態が安定化されることが知られており、パラジウム4価やイリジウム5価といった化学種を経ることで通常困難な不活性結合の切断や新しい結合の形成が期待できる。 今回、昨年度までに合成した2座ピリジリデン配位子を有するパラジウム錯体を用いてスクリーニングを行った結果、低収率ではあるもののピリジンやピレンに対して新しい位置選択性で炭素水素結合直接官能基化反応が進行することを見出した。この時、2,2'-ピリリジルや1,10-フェナントロリンといった配位子では反応が進行しなかったため、2座ピリジリデン配位子の有用性が示されたといえる。また、合成したパラジウム錯体の高原子価化学種の発生を試みたところ、温度可変NMRを用いることで目的化合物の観測及び高原子価状態からの還元的脱離の挙動を明らかにした。次に、2座ピリジリデン配位子を有するニッケル錯体の反応性を調査した。既に合成したニッケル2価錯体に対して塩酸塩を作用させることで対応するニッケル錯体が得られた。今後は電子豊富なニッケル0価錯体へと変換し、様々な不活性結合への反応性の調査と配位子の電子的特性の評価を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は2座ピリジリデン配位子の遷移金属錯体の配位子としての応用を見据えた研究をおこなった。顕著な研究成果として、新規炭素水素結合直接における2座ピリジリデン配位子の効果、温度可変NMRによる高原子価パラジウム種の観測、そしてニッケル錯体の反応性に関する知見が得られたことが挙げられる。これらは当初の研究計画に沿った十分な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果によって、遷移金属錯体の配位子としての2座ピリジリデン配位子の効果が徐々に明らかになってきた。特に、電子豊富なニッケル錯体は非常に高い反応性をもつことが予想され、従来の錯体では不可能であった特異な結合切断反応が期待できる。今後も引き続き触媒反応への応用だけでなく、当量反応の観点からも2座ピリジリデン配位子を有する遷移金属錯体の反応性を明らかにする予定である。
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Research Products
(1 results)