2014 Fiscal Year Annual Research Report
確率ブーリアンネットワークを用いた細胞内シグナル伝達機構のモデル化とその解析
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14J04139
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 智弥 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 国際情報交換 ベルリン / システム生物学 / シグナル伝達ネットワーク / 確率ブーリアンネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内におけるシグナル伝達ネットワークの解析は疾患発症メカニズムや生命現象の理解において重要である.そのため,シグナル伝達ネットワークの数理モデル化に関する研究が多くなされてきた.その中でもブーリアンネットワークモデルを用いた研究がさかんに行われてきたが,ブーリアンネットワークではモデルが単純化され過ぎているという点もしばしば指摘されてきた.そこで本研究では確率的な性質とブーリアンネットワークを組み合わせた確率ブーリアンネットワークを用いてシグナル伝達ネットワークのモデルを構築すること,そして計算機シミュレーションによってそのモデルを解析することを目的としている.当該年度では,主に(1)シグナル伝達分子の活性を促進または抑制する分子の影響を考慮したモデルの構築とプログラミングによる実装,(2)計算機実験によるモデルパラメータについての考察を行った. (1)に関しては,確率ブーリアンネットワークの性質を利用することで,シグナルの活性を促進または抑制する分子の影響を考慮したモデルの構築手法を開発した.また,シグナルが伝達される過程で生じるノイズも考慮したモデルを構築することで,実際の細胞内で起きているシグナル伝達により近いシミュレーションが可能となった. (2)に関しては,(1)のモデル化手法を用いて,ネガティブフィードバックループからなる単純な振動システムを人工的に作成し,パラメータがモデルに与える影響を考察した.その結果,パラメータの値によってはシグナル伝達システムが破壊されることが確認された.また,実在する大規模なシグナル伝達ネットワークのモデルを用いた場合でも同様の結果が得られた.モデルに応じた最適なパラメータの設定については今後も引き続き検討する. 以上の研究成果をまとめた論文を作成し,現在、国際学術論文誌に投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では,上述の通り,シグナル伝達分子の活性を促進または抑制する分子の影響を考慮したモデルの構築とプログラミングによる実装,そして計算機実験によるモデルパラメータについての考察を行った.これらの研究成果を論文にまとめて現在投稿中である.また,次年度についても,当初の計画通り,大規模なシグナル伝達ネットワークに対するモデル化と解析,そして,モデルを自動生成するソースコードを公開することが可能であると考えられるため,おおむね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
開発したモデル化手法を出芽酵母のMAPKネットワークに適用し,確率ブーリアンネットワークによるモデル化の有効性を検証し問題点の検出などを行う.また,MAPKネットワークに関するモデル化と解析結果に関して論文を執筆し投稿する. さらに,確率ブーリアンネットワークモデルを自動生成するソースコードを公開する.
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