2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヒッグス粒子・湯川結合定数の精密測定による質量起源の解明
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14J04171
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 智之 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 素粒子物理 / 加速器実験 / ハドロンコライダー / LHC / ATLAS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はLHCのATLAS実験において素粒子標準理論を超えた新物理の発見である。2015年5月からLHCは衝突エネルギーを上げ実験を再開する(Run2)。ヒッグス粒子精密測定による新物理探索を行っているが、同時にRun2での超対称性理論(SUSY)の直接探索による新物理探索にも興味を持っている。最も感度が高いグルイーノ(グル―オンのSUSYパートナー)対生成事象をターゲットとし、特に終状態が複数ジェットとレプトン1本、暗黒物質候補(LSP)が作る消失横方向運動量(MET)の崩壊モードに注目した。その主要な背景事象はtクォーク対生成(ttbar)事象で、Run2ではエネルギー増強により3倍以上の反応断面積を持つため詳細な研究が必須となる。ttbar背景事象の抑制のために、tクォーク崩壊からのbクォークジェットとMETの角度を分離変数とし、信号を90%以上残しつつ約50%のttbarを削減に成功した。また信号領域に混入するttbar事象量の評価法に関して先行研究ではモンテカルロシミュレーションを用いた手法を採用しており、その系統誤差が最終結果の精度を悪化させていた。そこでデータを用いた評価法の研究を行い、2本のレプトンを要求した領域を利用する手法が有望であることを示せた。 また新物理探索の感度を更に向上を目指しミューオン精密測定用Micromegas検出器をATLAS検出器に導入すべく、開発を進めている。小型試作機を用いて中性子照射試験を行い、実際にATLAS検出器が受ける中性子量環境下で正常に動作することを示した。また今年度から始まる実機の大量生産のための品質管理手法の研究が急務である。26年度は特に検出器の陽極部に相当する高抵抗ストリップ薄膜に焦点を当て、抵抗測定と画像解析によるストリップパターンマッチングによる品質管理手法の有用性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに順調に進んでいる。 新超対称性粒子発見のために重要となるトップクォーク対生成背景事象の除去方法と評価方法に関して新しい手法を確立でき、先行研究の感度を大きく改善できた。 Micromegas検出器に関してはATLAS検出器内の中性子照射環境下でも性能を十分発見することを示せた。また今年度から始まる実機大量生産のための品質管理の手法の開発も確立した。更にATLAS検出器に導入した際の性能評価のためのソフトウェアの開発の確立にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度5月からLHCは衝突エネルギー13TeVで実験を再開し、そこで新物理の発見を目指すのが本研究の目標となる。 まず5月までにトップクォーク対生成背景事象の信号領域への混入量の評価法を、取得済みのデータを用いて確立する。5月からはデータ取得を行いデータの質の評価を行いながら、超対称性粒子の信号の研究を行う。 今後Micromegas検出器に関しては、検出器からの信号を使ってどのようにトリガー信号を発行するかのアルゴリズムの研究を行う。まず26年度に開発したソフトウェアを用いて、シミュレーションによる最適なアルゴリズムの研究を行う。同時にそのトリガーアルゴリズムを実装するハードウェアの開発も始める。
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Research Products
(6 results)