2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J04193
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
西條 裕美 岩手大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | スギ / 樹皮 / 抽出成分 / 抗酸化 / 自動酸化 / ジテルペン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は我が国で資源量が多い針葉樹樹皮の抽出成分の利用を目的とし、平成26年度は、スギ(Cryptomeria japonica D. Don)に焦点をあて、以下のことについて調査した。 1)スギ樹皮抽出成分の個体間の変異 スギ樹皮抽出成分の個体間の差異が起きる要因は、種々の事柄が考えられる。一方、スギ葉の抽出成分では、品種ごとに葉に含まれるジテルペンに違いがあることがすでに既知であるため、まずスギ葉のジテルペンタイプに焦点をあて、抽出成分の含有に差異があるかを検討した。ケモタイプが異なるスギの樹皮抽出物に成分の含有量の差異は確認されたが、葉のケモタイプに依存する定性的に大きな違いは見受けられなかった。 2)スギ樹皮抽出物主要成分フェルギノールの活性評価 スギ樹皮抽出物利用のため主要成分であるフェルギノールの抗酸化能の評価と、その抗酸化機構及び自動酸化機構について追跡した。フェルギノールと市販抗酸化剤を用い各種抗酸化試験を行ったところ、フェルギノールは、不飽和脂肪酸中では他市販抗酸化剤に比べ酸化を抑制する特徴的な活性を示すことが分かった。フェルギノールの抗酸化機構について調べるため、フェルギノールと不飽和脂肪酸を混合して加熱した。各成分の生成量を反応時間ごとに追跡し、フェルギノールキノンメチド体を中間体とする、フェルギノールの抗酸化機構を推定した。次いでフェルギノールの自動酸化反応について調べ、生成物と樹皮成分との比較を行った。フェルギノールを自動酸化させたところ、生成物の変動は、油脂中のフェルギノールの誘導体の変化に類似しており、フェルギノールの抗酸化機構と同様の自動酸化の反応機構が推察された。 樹皮の成分変動が起こる要因には、試料調製の際の傷害や、酸化も要因であることが考えられたため、本研究を進める際には配慮する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度はスギを対象とし実験を行った。抽出成分の変動について、葉のケモタイプと樹皮成分の関係から調査した。当初の計画の地理的変異等も調べるに至らなかったが、葉のケモタイプに依存する特徴的な違いは樹皮には見受けられなかったこと、試料の傷害、保存状態等も成分構成に影響することが考えられたことから、地理的変異は次なる課題であるが成分利用の観点からは大きな問題ではないと判断した。またスギ樹皮の重要成分であるフェルギノールの酸化反応について、抗酸化活性の特徴と、詳細な反応機構の解析を行うことができた。本年度の研究成果を基に次年度はヒノキやヒバ(ヒノキアスナロ)を研究対象に移行することを考えており、研究進捗状況については、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はヒノキやヒバを対象に研究を行うが、これら樹種の樹皮成分の知見はスギに比べて少ないため、季節変動等の詳細を検討する前に、まず品種間の成分の差異について調べることが必要である。またスギ同様に主要成分の化学特性(抗酸化、自動酸化)と生物活性を検討する。
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Research Products
(3 results)