2015 Fiscal Year Annual Research Report
固液界面で機能する核酸-酵素ハイブリッド分子の創製とその高度利用
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14J04260
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高原 茉莉 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | セルラーゼ / DNAアプタマー / ターミナルトランスフェラーゼ / 微生物由来トランスグルタミナーゼ / バイオコンジュゲーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては機能性生体分子であるDNAアプタマーと酵素に注目し、その二機能を合わせもつDNA-酵素ハイブリッド分子の創製及び応用を行っている。DNAアプタマーとは、標的分子に対して特異的に結合する機能性一本鎖核酸である。ハイブリッド分子の応用を視野に入れた場合、ハイブリッド化において双方の機能性を最大にする必要がある。そこで申請者は、二種類の異なる酵素反応、ターミナルトランスフェラーゼ (TdT) 及び微生物由来トランスグルタミナーゼ (MTG) の基質特異性に着目し、部位特異的かつ高効率な複合化を進行させ、最終産物の機能損失を最小にする系を構築した。 本年度はハイブリッド分子の応用として、DNAアプタマーを用いた人工酵素の開発を行った。モデルとしたのは、セルロース系バイオマスの加水分解を触媒するセルラーゼである。セルラーゼはセルロースの加水分解により糖を生成し、バイオエタノールの原料を生産する。そのため、セルラーゼの触媒機能はバイオマスからの効率的なバイオエタノール変換へと重要な役割を果たしている。固体であるセルロースに対して効率的な加水分解が進行するのは、約30%のセルラーゼが触媒ドメイン (CD) に加えて、セルロース結合モジュール(CBM)を有してCDをセルロース表面に近接させ、固液界面における有効触媒濃度を高めているためである。よってCBMによるセルロースへの吸着は加水分解において非常に重要であり、CBMとセルロースの相互作用の解析は多く報告されている。そこで、申請者は新たなセルロース認識分子として、セルロース結合性DNAアプタマーに注目し、CDとDNAアプタマーをハイブリッド化することで新規人工セルラーゼの開発を行い、天然のセルラーゼに匹敵する機能性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハイブリッド化手法の最適化について、一昨年からの成果をまとめた口頭発表により一件受賞した。本年度においては、この手法を拡張し、DNAアプタマー鎖一本あたりに複数の酵素を効率的に標識可能な条件を模索し、標識効率とシグナルが一致した結果をまとめ、論文投稿し、受理された。 (M. Takahara, H. Hayashi, M. Goto, N. Kamiya, “Enzymatic conjugation of multiple proteins on a DNA aptamer in a tail-specific manner”, Biotechnology Journal, Accepted (2016)) また、人工セルラーゼ、CD-DNAアプタマーハイブリッド分子については、CD:DNAアプタマー=1:1のハイブリッド分子を調製し、固体セルロース基質の加水分解反応へと応用して天然のセルラーゼに匹敵する機能性を確認し、さらにセルロース-DNAアプタマー間の相互作用機構を解析及び顕微鏡で解析し、論文発表に値するデータを取得した。そして三報目の筆頭著者論文を2016年度中に投稿可能な状態であるため、研究はおおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ハイブリッド分子のさらなる応用展開として、がん細胞イメージング、がん細胞特異的な医薬品の開発を行う予定である。まずイメージングに関しては、緑色蛍光タンパク質と、がん細胞に過剰発現しているc-Metを認識するDNAアプタマーを前述の最適化した手法でハイブリッド化し、c-Met発現量に依存した蛍光でイメージングできるかどうかで機能性評価を行う。がん細胞特異的な薬物送達に関しては、c-Met認識DNAアプタマーと抗体Fc領域を組み合わせ、抗体のADCC効果、CDC効果を示すハイブリッド分子を調製し、次世代医薬品の武装抗体と同等の細胞傷害性を期待している。
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Research Products
(5 results)