2014 Fiscal Year Annual Research Report
合憲解釈による憲法価値の実現に向けた憲法訴訟・行政訴訟理論の日独比較法研究
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14J04287
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
原島 啓之 大阪大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 憲法適合的解釈 / 合憲解釈 / 連邦行政裁判所 / 専門裁判所 / 憲法裁判所 / 行政裁量の憲法的統制 / 法秩序の憲法化 / 具体的規範統制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ドイツ専門裁判所(連邦行政裁判所)の憲法判決を手がかりとして、合憲解釈(憲法適合的解釈)の方法を実証的に解明することを目標に研究を行った。研究遂行に当たっては、特別研究員奨励費の援助を受けて渡独し現地調査を行った。本研究に係る書籍・裁判例を幅広く調査・収集したのに加え、本テーマに造詣の深いブムケ教授及びレール教授と面談することを通じて憲法学・行政法学の双方の観点から助言を仰ぎ、ドイツの最新の議論状況についてご教示頂くことができた。 本年度の研究成果は、以下のようにまとめられる。 第1に、専門裁判所による憲法適合的解釈の積極化の背景を解明したことである。この実践の背景には連邦憲法裁判所の判例理論が存在する。すなわち、(1)具体的規範統制の適法性要件の厳格化、及び(2)憲法異議に基づく専門裁判所判決の統制という2つの判例理論である。これにより、憲法適合的解釈の手法を用いた(1)違憲判決回避のための法律の違憲性の是正、(2)法適用レベルでの憲法の顧慮が専門裁判所に義務づけられていることが明らかとなった。 第2に、憲法適合的解釈の方法・憲法の機能方法を解明したことである。具体的には、(1)行政作用の適法性審査(行政の判断結果・判断過程の統制)における憲法の援用により行政の法適用・裁量権行使を方向づける、(2)行政裁量それ自体の否定により行政に厳格な要請を課す、(3)憲法判断に基づき法律の適用範囲を限定・拡張する、という3つの仕方で憲法が機能していることが明らかとなった。 以上の研究成果を「ドイツ連邦行政裁判所の「憲法判断」の考察(一)(二・完)」と題する論文としてまとめ、『阪大法学』64巻5号、64巻6号(2015年)上に公表した。加えて、第17回ドイツ法フォーラム(2015年3月30日・京都大学)において「行政法の解釈・適用における憲法の機能」と題する研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画にほぼ準ずる形で研究が進展している。本年度は研究論文の公表および学会報告を行うことができ、研究成果の公表についても順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究を踏まえ、次年度は防御権の枠組では捉えきれない憲法適合的解釈の法的特質の解明に研究を発展させ、当該手法の限界や法継続形成・立法義務付け判決との異同・相互関係について考察を進める。加えて、これらの判決の後の立法・行政・司法過程への(広義の)法的効果についての研究も開始する。本年度の研究を基礎としつつ、ドイツ公法学の文献研究および連邦憲法裁判所・連邦行政裁判所の判例分析により、上述の研究を進めたい。
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Research Products
(3 results)