2014 Fiscal Year Annual Research Report
スピン型ソーラーセイルの膜面の形状と構造を考慮した姿勢ダイナミクス
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14J04481
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中条 俊大 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 宇宙大型薄膜構造物 / スピン型ソーラーセイル / 固有振動モード解析 / 多粒子モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
回転する大型膜面構造物としてのスピン型ソーラーセイルの,固有振動モード解析を行った.まず一般論として,回転する円形膜の固有振動モードについて考えた.円形膜の場合,近似的に解析解を導出することができる.その結果,遠心力下における円形膜の自由振動は,スピンレート(回転数)に比例する固有振動数を持つ面外振動モードであることが分かった.次に,実際のソーラーセイル(探査機IKAROS)に即したモデルを構築し,その固有振動モード解析を行った.IKAROSのセイルは,全体として1辺が13.56mの正方形型の膜面となっている.円形膜と異なり,このような四角形型のセイル膜面(と剛である探査機本体)の振動モードは解析的に解くことはできない.そこで,多粒子モデルを用いてこれをモデル化した.多粒子モデルは,膜面を多数の質点と,それらを結ぶバネ,ダンパによりモデル化するものであり,それらのパラメータ(質量,バネ定数,減衰係数)はセイルの物理特性から求まる.多粒子モデルによりセイル膜面を多質点系に置き換えたので,その運動方程式を線形化することで固有振動モード解析を行うことができる.その結果,例えば1次のモードでは,半径方向に直線的にたわんだ形状であり,その固有振動数とスピンレートがほぼ等しくなっており,先に導出した円形膜の解析結果と定性的に一致していることが分かった.次に,固有振動モード解析が妥当であることを確認するため,ソーラーセイルの過渡応答を,固有振動モード解析に基づいた計算(固有関数解析と呼ぶ)と,単純な数値積分(連続体解析と呼ぶ)の2通りで計算し,両者を比較した.両者の結果は大局的に一致しており,固有振動モード解析の妥当性を確認することができた.以上により,回転する薄膜構造物としてのスピン型ソーラーセイルの挙動の理解を深めることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
回転する薄膜構造物としてのスピン型ソーラーセイルの挙動の理解を深め,姿勢ダイナミクスを考える上で重要なセイル膜面形状のダイナミクスを解くことができたから.
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Strategy for Future Research Activity |
ソーラーセイルには,セイル膜面形状に起因する風車効果と呼ばれる現象がある.これは,セイルがねじれ変形を持つ場合,セイルに作用する太陽光圧により自動的に探査機のスピンレートが変わる現象であり,実際のソーラーセイルミッションにおいては,姿勢安定の観点から非常に大きな問題となっている.今後はこの問題に着目し,問題解決のための制御方針について考える.
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