2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J04648
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
赤井 菜々美 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞競合 / 発生ロバストネス / 細胞間コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞生物はその発生過程において、環境変化や遺伝子変異、損傷など様々なストレスを受けるが、そのようなストレスの存在下でも正常な形・大きさの組織を構築しようとする傾向がある。しかし、このようなロバストな発生過程を成立させる機構は未だ明らかになっていない。我々は、発生ロバストネスを支える分子メカニズム明らかにするため、リボソームタンパク質をコードする遺伝子に変異を持つショウジョウバエMinute変異体の発生過程を解析した。Minute変異体は特に幼虫期に発生遅延を示すが、最終的には正常な個体を構築する。そこで、幼虫期における翅成虫原基を構成する個々の細胞がどのように振る舞い、正常な個体発生を保証しているのか解析を行った。その結果、Minute変異体において細胞ターンオーバー(細胞死と細胞増殖による細胞の入れ替え)がさかんに起こっていること、またこの細胞ターンオーバーにより正常な翅形成が実現されていることを見いだした。さらに、細胞ターンオーバーが成長速度と関わりがあることを見つけ、細胞ターンオーバーがモルフォゲンWnt/Wingless依存的な細胞競合(環境適応度の高い細胞が低い細胞を組織から排除し、その空間を占有する細胞間の適者生存競争)により引き起こされる可能性を見いだした。これらの結果は、発生過程における時間軸の揺らぎを調節する機構に細胞競合が関わる可能性を初めて示したものであり、今後の研究の進展が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、多細胞生物がその発生過程において、種々の内的・外的ストレスの中でも正常に発生しようとするメカニズムの解明を目的とする。この目的を達成するために、研究代表者らは、幼虫期の成長遅延を特徴とするMinute変異体に着目し、幼虫期における組織中の細胞の振る舞いを解析した。その結果、個体の成長遅延が翅原基において細胞ターンオーバーを引き起こすという新規概念を提示することに成功し、さらには、それを誘発するメカニズムとしてWg依存的な細胞競合が関わる可能性を見いだすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
個体の成長遅延に応じて翅原基でWgシグナルに依存した細胞競合を誘発するメカニズムを明らかにする。その目的を達成するために、候補遺伝子に着目した遺伝学的解析および網羅的遺伝学的スクリーニングを展開する。網羅的遺伝学的スクリーニングは、具体的には、Minute変異体の翅成虫原基pouch領域に様々なRNAiを発現させ、これにより細胞競合に異常をきたす遺伝子を単離・同定する。次に、同定した遺伝子が細胞競合に果たす役割を遺伝学的に明らかにする。
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Research Products
(3 results)