2014 Fiscal Year Annual Research Report
組織特異的血管内皮幹細胞を用いた腎糸球体再生法の開発
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14J04730
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山根 惠太郎 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 腎血管内皮細胞 / SP細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々は、マウス下肢や肺、肝臓(未発表)において血管内皮幹細胞を分取し、試験管内でのコロニー形成、疾患モデルマウスの病体改善への貢献等を検討している。そこで、申請者は腎臓において上記のような組織特異的な血管内皮幹細胞の有無を明らかとし、この細胞集団のもつ特性について検討を行い、腎糸球体再構築法の開発を目的とし、研究を行った。 ①:当研究室でこれまでに実施された臓器での分散細胞の獲得方法を参考とし検討した結果、腎臓におけるCD31陽性CD45陰性の血管内皮細胞の分画をフローサイトメーター上で分取することが可能となった。 ②:次に、我々が血管内皮幹細胞分画として分取しているSide Population(SP)細胞の回収を検討した。これまでの検討結果より、下肢、肺、肝臓ではSP細胞の分取は可能であったが、腎臓においては該当分画の出現が安定しておらず、ヘキスト濃度や酵素処理時間など様々な検討を行ったが安定的に分取することができなかった。さらに、腎血管内皮細胞では、ABCG2等の薬剤トランスポーター遺伝子の発現量が非常に多く、これらの働きによってヘキストが過剰に排出され、染色の妨げになっているのではないかと考えられた。 ③:腎血管内皮細胞集団をOP9ストローマ細胞上に播種することで血管内皮細胞マーカーCD31陽性の血管ネットワーク構造をもったコロニーが形成される。このことは、腎血管内皮細胞集団内に1個の細胞からコロニーを形成する増殖能やコロニー形成能をもった幹細胞様の細胞が存在するということを示唆していると考えられた。 ④:既報(Sano H et al.2002)を参考とし、マウスの腎臓障害モデル作製を行った。血小板由来成長因子PDGFR-βの中和抗体を新生児期に投与することで、腎糸球体血管内皮の形成抑制を誘発するモデルを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血管内皮細胞中に存在する幹細胞様の性質を有する血管内皮幹細胞の腎臓での同定について、まず腎臓からの血管内皮細胞の分取方法を確立して、従来のヘキスト法を用いて解析した。しかしこのヘキスト法によるSP細胞分画では、幹細胞性を有する内皮細胞の濃縮が不安定であることが判明しており、現在、より安定的に内皮幹細胞を濃縮できるよう細胞表面マーカーを用いた解析に切り替えて研究を行っている。 当該年度の研究によって、腎血管内皮細胞における薬剤トランスポーターの発現等様々な特性が明らかとなっており、これらを次年度以降に生かすことで血管内皮幹細胞を得る手がかりになると考えている。また、内皮幹細胞の移植先となる薬剤を用いた疾患モデルマウスの作製も順調であり、内皮幹細胞の分取が可能になれば生体内での機能を検討することができると思われる。 以上から、これまでのところ、年次計画に沿った研究遂行に関しては十分に行われており、当初の研究目的の達成度としておおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度前半における研究結果より、現在のところ、我々は、腎血管内皮におけるヘキスト染色法ではなく、細胞表面抗原で幹細胞マーカーとなりうるものを探索しており、その際、当研究室において比較的検討が進んでいる肝臓由来血管内皮幹細胞におけるマイクロアレイ等の研究結果(未発表)を参考に進めていく予定としている。 さらに、当該年度において作製した薬剤投与による疾患モデルマウスをレシピエントとして使用することで内皮幹細胞が糸球体内に生着し、糸球体血管内皮の再生に寄与するか検討することができると考えている。 また、これまでの検討から、腎血管内皮細胞集団自体の割合が他臓器と比べ、比較的少ないということも明らかとなった。この細胞集団の増幅が出来れば腎臓血管研究の進展へ貢献ができると考えており、ラミニン等の細胞外マトリクスやサイトカイン添加等を行い、試験管内増殖の検討を実施している。さらに、移植の際に、走行性をもった血管を作製することが重要であると考え、脱細胞化血管を用いた培養法等の検討、その他の臓器スキャホールドの作製も検討しており、現在、ラットで行われている方法(Kadota Y et al.2014)を基にマウスの肝臓、腎臓へ応用することも検討している。肝臓等の他臓器の血管内皮や血管内皮幹細胞における検討で得られた知見を基に腎糸球体の血管内皮形成メカニズムの解明を行っていきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)