2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J04735
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大田 友和 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | 樹状細胞 / XCR1 / 腸炎 / 腸管免疫 / 恒常性 |
Outline of Annual Research Achievements |
樹状細胞(Dendritic Cell: DC)は、抗原提示細胞として自然免疫と獲得免疫との連関に重要な役割を果たし、多彩な機能的特性を持つサブセットから構成される。マウスのCD8α+/CD103+CD11b- DCは、死細胞を取り込み、CD8+ T細胞の分化を誘導する能力、さらに炎症性サイトカインを産生する能力が高い特性を持つDCサブセットである。このDCサブセットは抗腫瘍、抗ウイルス免疫応答に重要であると考えられている。しかしながら、生体の恒常性維持や、種々の炎症性疾患におけるこのDCサブセットの役割についてはわかっていない。 そこで、CD8α+/CD103+CD11b- DCに選択的に発現するケモカイン受容体XCR1に着目し、XCR1遺伝子座へcreレコンビナーゼをノックインさせたマウスを樹立して、そのマウスを元に、XCR1発現DCを恒常的に欠失するマウスXCR1-DTAマウスを作成した。このマウスでは、期待通り、リンパ組織や末梢組織でXCR1+ DCすなわちCD8α+/CD103+CD11b- DCが選択的かつ恒常的に欠失しており、生体内におけるCD8α+/CD103+CD11b- DCの機能的役割を解明するために非常に有用であると考えられた。 XCR1-DTAマウスを用いて、T細胞ポピュレーションを解析したところ、脾臓やリンパ節などでは変化は認められなかったが、腸管粘膜のT細胞が顕著に減少していた。さらに、デキストラン硫酸ナトリウムの投与により誘導される腸炎症状の増悪が認められた。 これまでの結果から、XCR1+ DCが腸管粘膜T細胞の維持、分化に寄与し、炎症制御と腸管粘膜の恒常性を維持していることが明らかとなった。また、これらの制御機構を担う他の分子の探索、他疾患モデルにおけるXCR1+ DCの機能的役割の解明を視野に入れ、現在も研究を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体内におけるCD8α+/CD103+CD11b- DCの機能的役割を解明するために、XCR1+ DC(CD8α+/CD103+CD11b- DC)が選択的かつ恒常的に欠失するマウスXCR1-DTAマウスを樹立し、腸管粘膜におけるT細胞ポピュレーションの解析を行った。XCR1-DTAマウスは、脾臓やリンパ節などでは変化は認められなかったが、腸管粘膜固有層および腸管粘膜上皮細胞間T細胞が顕著に減少していた。さらに、腸管粘膜のT細胞における表面分子およびサイトカイン遺伝子発現の解析を行った。腸管粘膜固有層のT細胞は、リンパ節や脾臓のT細胞に比較して、CD62Lの発現が低下すると共に、CD103の発現が増加しており、腸管特有の表現型を示す。XCR1-DTAマウスの腸管粘膜固有層T細胞では、この表現型が顕著に阻害されていた。次に、CD4+ T細胞のサイトカイン遺伝子発現のパターンについては、IFN-γやIL-10などの発現が低下し、一方IL-17やIL-22、IL-4などの遺伝子発現が増加していた。腸管粘膜上皮間T細胞は、炎症応答を制御する役割が報告されているが、XCR1-DTAマウスにおいても、デキストラン硫酸ナトリウムの投与により誘導される腸炎症状の増悪が認められた。以上の結果から、XCR1+ DC(CD8α+/CD103+CD11b- DC)が腸管粘膜T細胞の維持、分化に寄与し、腸管粘膜免疫システムの恒常性を維持していることが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
XCR1-DTAマウスを用いることによって、腸管粘膜におけるCD8α+/CD103+CD11b- DCの新たな機能的意義が明らかとなった。そこで、この制御機構に関わる機能分子の探索を行うために、まず、XCR1欠損マウスおよびXCR1のリガンドであるXCL1の欠損マウスを用いて、同様の解析を行っている。上記遺伝子欠損マウスにおけるXCR1+ DCの細胞局在、遺伝子発現パターン、機能解析について精査する。また、その他機能分子の探索、機能解析も同時に進める。 XCR1+ DC(CD8α+/CD103+CD11b- DC)は、リンパ組織や腸管粘膜のみならず、皮膚や肺、肝臓組織などにも存在する。そこで、他臓器、組織におけるXCR1+ DCの機能的役割の解明も視野に入れ、XCR1-DTAマウスを用いた他疾患モデルについても解析を進める予定である。
|
Research Products
(3 results)