2015 Fiscal Year Annual Research Report
ヘーゲル哲学体系における自然と精神の関係から読み解く、自然美と芸術美概念の再検討
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14J04784
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
瀧本 有香 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 美学 / ヘーゲル / 生 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はヘーゲル美学講義録の翻訳、また講義録研究論文の執筆をし、またヘーゲル美学の背景を探ることを目的としてシェリングやヘルダーリン、及びシラーとの比較検討、及び生と美との関連について研究を行った。 ヘーゲル研究において筆記録を重要視する見解が高まっている中、明治学院大学の寄川条路教授編集のもと、ヘーゲルの1820/21年の『美学講義』の翻訳書(2016年出版予定)の共訳者とて、「芸術の特殊的部分」の章の翻訳を行った。さらに、Hegel-Studien, Bd. 26の翻訳書『ヘーゲル講義録研究』(2015年11月出版)の共訳者としてその中の Helmut Schneiderの論考を訳した。また、これらの成果を踏まえた上で、共著『ヘーゲル講義録入門』にヘーゲルの美学講義に関しての論文を執筆した(2016年出版予定)。 ヘーゲルは、有機体がもつLebendigkeitが美において根本的な規定であるとし、彼が理想とする芸術美においても自然美に備わる生動性がなければならないとした。こうした彼の主張に関して、ヘルダーリンの美と生の思想、また自然の創造性の契機をシェリングからの影響を考えた。またヘーゲルは、感性と理性、主観と客観といったあらゆる対立を統一に導くものとしての美を学として定立するために美学において美を客観的に論じる方法を探究したが、それはシラーの姿勢と通じるものである。シラーとの共通点を踏まえつつ、2015年12月にヘーゲル学会において「ヘーゲル美学における生動性の概念をめぐって」というタイトルで発表した。また、2016年3月に美学会の東部会例会において「ヘーゲル美学における生の意義」というタイトルで発表し、各年の美学講義録の変遷を追いながら、ヘーゲル哲学・美学における生と美との関連について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、ヘーゲル美学講義録の翻訳や各年度の講義録の比較検討については予定通りに進めることができた。また、彼が美学を構築するにあたって影響を受けたと考えられるヘルダーリンやシェリング、またシラーとの比較検討も行うことができた。しかしながら、私が主題に据えている自然と精神の関係に関しては研究が進んでおらず、自然哲学、精神哲学の読解を今後していかなければならない。また私は、ヘーゲル美学における自然美と芸術美を検討する上で、美における生が鍵となる概念だと考えているのだが、それについてもまだ大いに検討しなければならない点がある。ヘーゲルは理念の規定をもとに美と生とを関連づける考えを持っていたが、それを軸にして美と生の関連を論じるとしても、自然物など実際に生きているものにおける美と芸術作品に現れている生における美とは論じ分けなければならない。私は2016年3月の美学会東部会例会において、有機体の生と、ヘーゲルが高く評価したネーデルランド社会とそこで生まれた風景画における美とを、ヘーゲル美学における生と美の関連として論じたが、これらは生動性をもとにした美しさだとしても次元が違うものであり、一つのテーマとして括ることができるものではない。 そうした様々な混同が現在の問題点としてあるため、一つ一つのテーマをより深めていき、ヘーゲルの論をより明確に捉えることが今後の課題となっている。また、美の問題を美学のみならずヘーゲル哲学全体から考え直す必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは各年度美学講義録の文献学的研究が主だったが、今後はその年代的変遷も引き続き検討しつつ、ヘーゲル哲学・美学を綿密に考察することに重点を置いて研究していく。まず、これまで検討してきた美と生の関わりに関して、理念と美、また生の関連を美学のみならず論理学も読み解きながら探っていきたい。また、私がこれまで明確に論じ分けていなかった有機体における生と、芸術作品の中にある生の差異を明確にし、さらに彼が最も理想の芸術美だとした古代ギリシア彫刻における身体性についても美と生の問題を論じる上で研究していかなければならない。 また、ヘーゲルはネーデルラントの風景画を高く評価したわけであるが、実際にどのような絵画を見ていたのか、またそうした判断は妥当なものと言えるのか、それともヘーゲルが自分の論に合うように都合よく解釈したものであるのかを吟味する必要がある。 さらには、自然美と芸術美について検討する上でその違いのもととなっている自然と精神に関しても考察をしなければならない。それにあたり、自然哲学及び精神哲学の読解をこちらも各講義録をもとに進める。 各々のテーマを掘り下げ、議論が浅いものにならないよう研究しながら博士論文執筆の準備を行っていきたい。なお学術論文としては、2016年3月に美学会東部会例会にて発表したものに修正を加えたものを美学会学会誌『美学』に応募し、また早稲田大学大学院文学研究科の紀要に応募する。
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Research Products
(3 results)