2015 Fiscal Year Annual Research Report
金属資源回収と有害金属除去に有用なShewanella属低温菌の金属代謝機構解析
Project/Area Number |
14J04852
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大毛 淑恵 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | バイオテクノロジー / 金属代謝 / 微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
Shewanella livingstonensis Ac10 は三価鉄存在下でリン酸選択的チャンネルのホモログである PhoE を誘導発現する。PhoE はリン酸欠乏状態で誘導発現するポーリンタンパク質として知られている。クエン酸鉄 (III) 含有合成培地では、リン酸と鉄イオンから不溶性リン酸鉄が生成することにより、リン酸濃度の低下を起こし PhoE ホモログを誘導発現する可能性が考えられた。そこで、呼吸基質として クエン酸鉄 (III) またはフマル酸を含み、リン酸濃度を 0.03, 15, 150 mM のいずれかに調製した合成培地を用い、野性株と phoE 遺伝子欠損株について、生育能と三価鉄還元能について評価した。その結果、いずれのリン酸存在下でも呼吸基質がクエン酸鉄 (III) の場合、phoE 遺伝子欠損株は野生株に比べ、生育能と二価鉄生成能が顕著に低下することが分かった。一方、フマル酸を呼吸基質として含む培地では、リン酸濃度に関係なく phoE 遺伝子欠損株は野生株と同様に生育した。phoE 遺伝子欠損株 に phoE を発現するプラスミドを導入した phoE 遺伝子相補株は、同条件で野生株と同様の生育能と二価鉄生成能を示し、phoE の機能を回復した。15 mM フマル酸あるいはクエン酸鉄 (III) を含む合成培地で静置培養した本菌を用いて、PhoE のモノクローナル抗体によるウエスタンブロッティング解析を行った。その結果、クエン酸鉄 (III) 存在下で PhoE の顕著なシグナルが得られた。phoEと 16S rRNA について real-time RT-PCR 法により誘導発現解析を行った結果、phoE は転写レベルで制御されることが分かった。以上の結果から、本菌の鉄呼吸において PhoE が重要な機能を担うことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
S. livingstonensis Ac10 における鉄呼吸について重要な知見が得られた。この点については進展が見られたといえる。一方、リン酸選択的チャンネルホモログである PhoE が S. livingstonensis Ac10 の鉄呼吸においてどのような機能を担っているか明らかにする必要があるため、「おおむね順調に進展している」と評価することが妥当と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸菌のリン酸選択的チャンネルタンパク質である PhoE は、正電荷を有するアミノ酸が局在する親水的な筒型構造を生体膜上で形成することで、リン酸を特異的に取り込む輸送体と考えられている。S. livingstonensis Ac10 の PhoE のタンパク質立体構造予測から、13 個のリジン残基と 5 個のアルギニン残基がポーリン孔内に存在する可能性が示されたことから、S. livingstonensis Ac10の鉄呼吸においても、PhoE を介した負電荷を持つ呼吸基質(クエン酸鉄 (III))の取り込み機構の存在が示唆された。S. livingstonensis Ac10 の PhoE の基質輸送に関わることが予想されたリジン残基あるいはアルギニン残基をそれぞれグルタミン酸に置換し、本菌の鉄呼吸能への影響を解析する。
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