2015 Fiscal Year Annual Research Report
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14J04853
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
工藤 顕太 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ラカン / 主体の分裂 / 事後性 / 主体と真理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1960年代後半から1970年代におけるラカンのテクストを検討対象とし、主体の分裂と性関係の不在をテーマとしてラカンの議論の変遷を追跡した。この作業によって、主体の分裂という1950年代以来のラカンの基本テーマが、真理と知の分裂と現実界の問題の探究、知から排除され症状として回帰する現実界としての性の問題の探究を経て、享楽の不可能性ないしその非全体化というかたちで、後期ラカンの議論に流れ込んでいるという仮説が確証された。また、分裂というメカニズムを核としたラカンの主体概念と、近代哲学史における主体概念との緊張関係を明らかにするとともに、主体の分裂の現代的意義を探る理論的基盤を構築した。具体的には、デカルト・カント・ヘーゲルに至る主体の哲学の系譜と科学的な知の形成・発展との共犯関係に対するラカンの批判的視座の内実を解明し、フランスにおける今日のラカン研究の成果と合わせて検討した。この作業は今後の研究を方向づけるひとつの力線となるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、2015年10月から研究指導委託を利用したフランスにおける在外研究を開始した。これにより、指導委託先であるパリ高等師範学校の講義はもとより、パリ第八大学の研究セミネールやその他ラカン派組織の研究会に参加するなど、フランスにおける最先端のラカン研究の水準を見据えて自身の研究を遂行している。また、日本においては未だに全く紹介されていない多くの重要な二次文献の収集、読解の作業も進めている。以上の点から、研究の進捗は順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きラカンの後期のテクストの読解作業を進めるとともに、これまでの研究成果の有機的な連関をより明確なものとし、本研究全体のまとめ作業に着手する。とりわけ言語という最も基礎的な主題と関連して、一年目の成果において明らかになったデリダのフロイト読解の基本的な方向性と、二年目の作業によって浮き彫りになったラカンの精神分析理論における事後性の位置づけ(とその変遷)との関連というパースペクティヴを新たに設定する。これにより、ラカンとデリダの関係をフランスにおけるフロイト受容の在り方ならびに現代フランス哲学に至る哲学史と結び付けて捉え直す作業の大詰めに入る。また、二年目は在外研究により公表された業績が一本に留まったため、三年目は複数の発表機会を得て本研究の成果を具体的な業績としてまとめることとする。
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Research Products
(1 results)