2014 Fiscal Year Annual Research Report
重度心身障害児の認知レベルに応じたコミュニケーション支援技術
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14J04908
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田村 かおり 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 重度心身障害児 / 自己名 / 脳波 / 音声認知 / 残存脳機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
重度心身障害児らの呼名刺激時の脳活動に着目し、タスク作成と脳波計測を行った。タスクでは、音声刺激によって、自己名と一般名詞を提示し、脳波応答の比較を行った。また、同時に重度心身障害児群と健常群とを比較した。 重度心身障害児らの呼名刺激時の脳波応答と、健常群の脳波応答を比較したところ、重度心身障害児ではシータ波帯域での位相同期に特徴的な活動が共通して出現することを見出した。一方、脳波振幅から得られるパワー解析においては、重度心身障害児に共通した応答は見られなかった。よって位相同期に関する解析方法のほうが、対象とする患者らの脳活動応答を解明するために適切であることを示した。 また、このシータ波帯域の位相同期は、音声呼名刺激時とその他の音声刺激時とで、重度心身障害児内で差が見られることが明らかになった。これらの結果は、音声刺激の中でも自己名である呼名刺激によって、患者らの聴覚野応答が強く誘起される可能性を示唆する。さらに、シータ波帯域と語彙認知プロセスとの関連性がこれまでに報告されていることから、本研究において、患者らが自己名に何らかの意味があることを認識している可能性を初めて示した。重度心身障害児らが外界刺激を認知しているかどうかについては、これまでに脳応答を用いた評価がほとんどなされてこなかった。この結果は、重度心身障害児らの応答理解・認知機能評価をするうえで意義があるものである。また彼らのコミュニケーション支援を行う上で極めて重要な結果であると思われる。これらの研究成果はBrain and Development誌に受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、重度心身障害児のコミュニケーション支援にむけて、患者らの不明瞭な応答の意味を呼名刺激で理解しようと試みた。昨年度までは、様々な患者らの脳波データ計測およびそれらの解析を行うことができた。また、脳波の周波数解析において、シータ波帯域から、患者らの応答に対してある一定の結論を導くことができ、査読付き論文として発表することができた。これらの進捗から、現在までの研究目的はおおむね順調に達成できていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、まずシータ波帯域以外の脳波周波数解析を行い、より正確に重度心身障害児の応答理解に努める。これまでに行ってきたのは主に位相同期解析であり、また電極数も単一のデータを用いている。今後は位相だけでなく、脳波の振幅およびパワーに着目して、幅広い周波数帯の解析を行っていく。また、実際の計測では複数の電極を使用しているため、多変量データとしての解析が可能である。電極位置という次元を加えることで、詳細な応答理解につなげる。 さらに、音声刺激として呼名刺激を用いてきたが、さらに多様な音声刺激(複数音節・意味のない単語・一般名詞)を対象に広げる。これらの音声刺激に対する基礎データを収集し、幅広い重度心身障害児応答理解への応用に活かす。
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Research Products
(6 results)