2014 Fiscal Year Annual Research Report
医薬価値に優れた骨形成促進人工ペプチドの創製とその骨代謝疾患治療への展開
Project/Area Number |
14J04929
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
永野 貴士 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | RANKL / 骨再生ペプチド / ファージ表面提示法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題の目的は、重度の骨粗鬆症など、骨量減少を伴う難治性骨疾患に対する新たな骨形成促進薬を開発することである。本年度は、ファージペプチドライブラリ構築後に親和性の向上したクローンを検出するための条件設定を目的に、鋳型であるW9・OP3-4提示ファージを用い各種条件を評価した。また、W9・OP3-4の一部の配列に対して網羅的に変異を導入し、数億種類もの多様性を有するファージペプチドライブラリの構築も試みた。 まず、骨形成のシグナル伝達に関与する破骨細胞分化因子RANKLに結合性を示すペプチド(W9・OP3-4)を提示したファージを作製し、RANKLをプレートに直接固相化した際に、ファージを検出できるかをELISAにより評価した。その結果、ファージの検出が認められなかったことから、次に、RANKLをビオチン化して、ストレプトアビジンプレートへ間接的に固相化し同様にELISAにより評価した。その結果、ファージが検出できたことから、候補クローンの探索に向けた条件設定が確立したと考えられた。そこで次に、RANKLに対して親和性の向上したペプチドを探索するために、鋳型ペプチドの配列のうち、どの部位に変異を導入するかについてライブラリのデザインを試みた。過去の点突然変異法による先行研究や、鋳型ペプチドの基となった受容体タンパク質とRANKLとの複合体構造による情報から、更なる活性増強の余地が残されていると考えられる残基部位3-7アミノ酸に対し網羅的な変異を導入したライブラリをデザインした。各遺伝子をコードしたファージミドベクターを大腸菌(TG1)に形質転換しモノクローン化しライブラリサイズを評価したところ、数億種類のサイズであることが確認された。また、シークエンス解析の結果、塩基配列も異なっていたことから、数億種類の多様性を有するファージペプチドライブラリを構築できたことが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ファージペプチドライブラリ構築後に、RANKLに対して親和性の向上した候補クローンを同定する際、ペプチド提示ファージの検出が必要である。これまで我々は、抗体やタンパク質を提示させたファージライブラリから、目的のタンパク質に対して高親和性のクローンを単離してきた実績を有している。しかしながら、ペプチドは、一般的に低親和性であることから、RANKLに対する親和性が向上していたとしても、その強さが十分でないために、結合したとしても検出が困難な可能性が考えられる。そこでまずは、鋳型ペプチド提示ファージを用い、ELISAでの検出ができるかを評価したところ、ファージの検出は認められなかった。プレートや膜に固定化されたタンパク質の中には、物理的な影響を受けて立体構造が変化するものがあることが知られている。上記ELISAは、従来までと同様に、タンパク質をプレートへ直接固相化して行っていたことから、RANKLの配列の内、ペプチドと相互作用する部分に影響が生じた可能性が考えられた。そこで、RANKLを間接的に固相化した結果、ペプチド提示ファージとRANKLとの結合を検出できるようになり、候補クローンの探索に向けたペプチド提示ファージの条件設定を確立することができた。従って、本年度予定していたファージペプチドライブラリを用いてのスクリーニングまでは至らなかったものの、候補ペプチド提示ファージの検出条件を設定し、以降の検討を進めるための用意は整ったことから、本年度は、予定内容のうち、おおむね達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ファージペプチドライブラリの構築、および、ペプチド提示ファージの検出条件の設定ができたことから、次年度では、RANKLに対して親和性の向上したペプチドのスクリーニングを行う。ファージELISAにより鋳型ペプチドと比較して吸光度の高い候補クローンを見出し配列の解析をした後、ペプチドを合成するとともに、合成の間に、ペプチドの安定性向上を目的としたFc領域融合ペプチドの作製を進め、RANKLとの親和性をELISAやBiacore等により精査していく。また、鋳型ペプチドと比較して親和性の向上した候補ペプチドに関しては、マウス由来前骨芽細胞や骨芽細胞株(MC3T3-E1細胞など)の分化・成熟作用(骨形成の評価)を指標とした生物活性評価を行い、骨再生ペプチドとしての有用性を解析する。本ペプチドの骨形成促進作用は、骨芽細胞上に発現している膜型のRANKLを介したシグナルにより発揮されることが明らかとされており、このシグナルは、RANKL結合ペプチドがオリゴマー化(凝集)することで、活性が強くなることが示唆されている。そこで、候補ペプチドに対して、櫛形ポリエチレングリコール(櫛形PEG)による高分子修飾を施し1本のPEG鎖に複数のペプチドが連結されたペプチドオリゴマーを合成することで、骨形成に関わるシグナルが増強するかについて評価する。これらin vitroの検討で有用と思われたものに関して、in vivoの検討を実施する。具体的には、本研究室でモデルが構築済みである関節リウマチモデル(TNFαやRANKLが、病態悪化に関与)や共同研究先が有する頭蓋骨欠損モデルや骨粗鬆症モデルを用いて骨再生の評価を行う。
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