2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J04974
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
郡司 芽久 東京大学, 総合研究博物館, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 偶蹄類 / 頸椎 / 筋骨格構造 / 解剖学 / 形態学 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は、偶蹄類における首の構造と機能の進化の解明を目指し、様々な種の頸部筋骨格構造の観察・記載を行っている。2014年度は特に、偶蹄類の中で何度も独立に起きた「首が長くなる進化」に着目し、キリン科・ラクダ科・ウシ科に焦点を当て、種ごとに筋骨格構造の記載を行った。研究手法としては、皮膚や筋肉ごと冷凍保存された標本の解剖と、骨格標本として保存された標本の観察を採用した。解剖では、動物園等で死亡し、国内の協力研究機関(東京大学総合研究博物館、国立科学博物館、神奈川県立生命の星・地球博物館)に収蔵された偶蹄類標本を利用した。頸部に存在する複数の筋肉の起始・終止・付着位置を種間で比較したところ、キリンでは、他の偶蹄類に比べ、頸椎背側に位置する「最長筋」「板状筋」、腹側に存在する「頸長筋」の付着領域が変化していることが明らかになった。 また、骨格構造の観察では、頸部を構成する椎骨の形態に注目し、椎骨の形状・大きさを反映するいくつかの部位を計測するとともに、関節面や突起の位置の記載を行った。骨格構造の観察には、国立科学博物館、アメリカ自然史博物館、パリ自然史博物館に保管されている骨格標本を用いた。頸部の著しい伸張が知られるキリン(キリン科)とゲレヌク(ウシ科)の頸椎を比較したところ、キリンでは第1ー第7頸椎全てが伸張しているのに対し、ゲレヌクでは頭方にある一部の頸椎のみが伸張していることが明らかになった。また、ゲレヌクの第1・第2頸椎は、キリン科やラクダ科がもつ椎骨形態の特徴とは大きく異なり、ウシ科の他種でも見られない形態学的特徴を数多く示した。これらの特殊な形態学的特徴は、後肢で立ち上がって採食を行うというゲレヌク独自の行動への適応であると解釈した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
事前に標本提供を依頼していた国内の研究機関から予想以上に好意的な協力を得たため、偶蹄類の中でも著しく頸部が特殊化しているキリン(キリン科)、ラクダ・アルパカ(ラクダ科)における詳細な筋構造のデータを得ることが出来た。キリン科・ウシ科に属するいくつかの種は、国内で標本を手にいれることが非常に困難であると予想されたが、アメリカ自然史博物館およびニューヨーク工科大学の協力を得る事で、頭骨・脊椎骨の形態データを多数取得することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に収集したキリン、ラクダ・アルパカ、ゲレヌクの頸部筋骨格構造のデータを、近縁で頸部が長くない種と比較することで、頸部の伸張に伴う構造的変化を明らかにしていく。また、頸部が特殊化している種同士の筋骨格構造を比較することで、偶蹄類における頸部伸張の基本的なパターンの把握を試みると共に、それぞれの種の生態・行動と関連した頸部の機能と構造の変化の様子を明らかにしていく。
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Research Products
(3 results)