2015 Fiscal Year Annual Research Report
多彩な化学種を内包できる開口フラーレンの有機合成ならびに物性探索
Project/Area Number |
14J04983
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
二子石 師 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | フラーレン / 開口フラーレン / 硫黄原子 / ホルムアルデヒド / 構造異性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
C60やC70に代表されるフラーレンは,炭素が球状に結合し,三次元に広がったπ共役系をもつ化合物であり,基礎化学・材料化学・生理活性物質として近年非常に高い注目を集めている.特に,フラーレンC60は内径約3.7Åの中空構造をもち,その内部空間は水分子や窒素分子といった小分子を内包するのに最適な大きさである.もし,望みの小分子を自在に内部に導入することができれば,フラーレンC60と内包化学種がどのように相互作用するのか,また外界から完全に隔離された単分子がどのような性質をもつのかを研究する理想的な分子となることが期待される.本研究では,巨大な開口部をもつ開口フラーレンに対して,不安定化学種であるホルムアルデヒド分子の内包を試みた.
開口体へのホルムアルデヒド分子の導入は,クロロベンゼン溶液中にホルムアルデヒド分子の前駆体として1,3,5-トリオキサンを加え,高温高圧下 (8000 atm,150 ℃),24時間加熱することにより進行した.さらに,開口部上のカルボニル基を還元しストッパーを設けることで,ホルムアルデヒド分子を室温下,安定に取り扱うことに成功した.
次に,開口部の閉環反応について検討した.開口部を閉環し,小分子内包フラーレンを合成するためには,開口部上の硫黄原子を取り除くことが必要である.そこで,開口部上の硫黄原子を酸化した後,ベンゼン溶液中光照射をおこなった.その結果,目的とした一酸化硫黄が脱離した生成物は観測されず,骨格の複雑な構造異性化を伴う開口部縮小反応が進行することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目標であった,不安定化学種であるホルムアルデヒドの内包に成功した.さらに開口部の閉環について検討した結果,期待した開口体は得られなかったものの,複雑な構造異性化を伴い開口部が縮小した新規開口体が得られることを見出した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,以下二つの検討をおこなう予定である.① 内包フラーレンの合成を目指した開口部の修復反応の開発,並びに ② 開口部に組み込んだヘテロ原子を利用したヘテロフラーレンの合成を検討していく予定である.
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Research Products
(4 results)