2015 Fiscal Year Annual Research Report
磁性多層膜-CoFeB積層電極を用いた微細磁気トンネル接合に関する研究
Project/Area Number |
14J05000
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石川 慎也 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 磁気トンネル接合 / CoFeB / Co/Pt多層膜 / Co/Pd多層膜 / 高熱安定性 / ダンピング定数 |
Outline of Annual Research Achievements |
磁気トンネル接合(MTJ)を用いた不揮発性を有するワーキングメモリは、高速性・非破壊読み出し・書き込み耐性・低電圧動作を備えており、将来の高性能メモリデバイスとして期待されている。現在用いられているワーキングメモリであるDRAMの代替を実現するためには、大容量化のための微細化、高速読み込みのための高トンネル磁気抵抗(TMR)比、情報を安定に保持するための高熱安定性Δ、低書き込み電流Ic0を満足するMTJを開発する必要がある。私は昨年度までに、Co/Pt多層膜とCoFeBを積層したCoFeB/Ta[Co/Pt]構造を用いることで、直径17 nmのMTJ素子において、Δ=92の高熱安定性と91%の高TMR比を実現し、またPtをPdに置き換えたCoFeB/Ta/[Co/Pd]構造を用いることで熱安定性を維持しながら書き込み電流を低減することに成功している。当該年度は、微細MTJ素子の高性能化を実現する材料の知見を得るために、CoFeB/Ta/[Co/Pd(Pt)]構造の①Ic0に関係する材料パラメータであるダンピング定数αの評価、②直径20nm以下のMTJ素子における電流誘起磁化反転特性の評価を行った。主な成果としては、①本研究で用いているような2つの強磁性体が交換結合した系における強磁性共鳴のモデルを確立し、CoFeB/Ta/[Co/Pt]構造よりもCoFeB/Ta/[Co/Pd]構造のほうがαが小さいことを明らかにした。また、②直径13-15nmの微細MTJ素子の電流誘起磁化反転特性を評価し、Ic0が単一スピンモデルから得られる推測と符合していないことから、両構造を用いた磁気トンネル接合の電流誘起磁化反転特性を理解するためには、更に発展させたモデルもしくは理論で考えられていない効果を取り入れて解析する必要があることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、磁気トンネル接合(MTJ)を用いた不揮発性を有するワーキングメモリを実現するために、大容量化のための微細化、高速読み込みのための高トンネル磁気抵抗(TMR)比、情報を安定に保持するための高熱安定性Δ、低書き込み電流Ic0を満足するMTJを実現する材料・構造を確立することを目的としている。私が採用前までに研究してきたCo/Pt多層膜とCoFeBの積層構造を用いたMTJの成果を基盤として、①Co/Pt多層膜ベースの垂直磁気異方性MTJのTMR比の向上、②Co/Pt多層膜ベースの垂直磁気異方性構造のダンピング定数αの評価、③低Ic0材料の探索、④20nm以下の微細MTJのプロセス技術の確立、を具体的な計画としている。昨年度は、①、③、④を達成しており、本年度は②、③について取り組んだ。具体的には、(a)CoFeB/Ta/[Co/Pd(Pt)]構造のαの評価、(b)直径20nm以下のMTJ素子における電流誘起磁化反転特性の評価を行い、CoFeB/Ta/[Co/Pt]構造よりもCoFeB/Ta/[Co/Pd]構造のほうがαが小さいこと、電流誘起磁化反転特性が単一スピンモデルから得られる推測と符合していないことから、両構造を用いた磁気トンネル接合の電流誘起磁化反転特性を理解するためには、更に発展させたモデルもしくは理論で考えられていない効果を取り入れて解析する必要があることを明らかにした。以上の成果から、今年度は期待通り研究が進展していると評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
私は本年度、(a)CoFeB/Ta/[Co/Pd(Pt)]構造のαの評価、(b)直径20nm以下のMTJ素子における電流誘起磁化反転特性の評価を行い、CoFeB/Ta/[Co/Pt]という材料に関する知見を得た。今後はそれらを活かし、さらなる高熱安定性、低書き込み電流を目的として、新規材料・構造の検討を行う予定である。
|
Research Products
(2 results)