2014 Fiscal Year Annual Research Report
超高速新型トランジスタ実現に向けた新規酸窒化物半導体の創製
Project/Area Number |
14J05011
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松島 宏一 九州大学, システム情報科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | エキシトニックトランジスタ / 酸窒化物半導体 / ピエゾ電界 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.光通信波長帯域に対応したZION量子井戸の実現 ZIONを用いたエキシトニックトランジスタの実用化のためには,光通信帯域に対応するEg=0.8~1.0eVのZIONが望まれる.このZIONを実現するためには,結晶欠陥に起因する残留キャリア密度の低減が必要である.何故ならば,残留キャリアが高密度の場合光吸収端の短波長シフト(Burstein-mossシフト)が生じるためである.本研究では,ZIONの組成比(ZnO)x(InN)1-xからのずれが小さいほど,バンドギャップが減少することが分かった.この結果は,ZIONの組成比のずれにより残留キャリア密度が増加し,最終的にBurstein-mossシフトが生じることを示唆している.組成比のずれを抑制するため,プラズマパラメータ制御による,組成比の精密制御を開始している.この組成比の精密制御により更なる狭バンドギャップ化が期待される.
2.光信号によるエキシトン流のスイッチング 障壁層にZnO (Eg=3.4eV),井戸層にZION (Eg=3.1eV)を用い,ZIONがZnOに対して格子緩和している無歪量子井戸,コヒーレント成長している歪量子井戸の2種類の光応答特性を評価した.歪量子井戸では,井戸層に0.89 MV/cmのピエゾ電界が発生していると見積もられる.歪量子井戸でのみ,レーザー光(2.3eV)の重畳照射により,光電流が太陽光のみを照射した場合の1.8倍に増加した.この結果は,歪量子井戸では,(i)井戸層内に光生成キャリアが高濃度に存在すること,(ii)井戸層内の光生成キャリアを,光重畳により障壁層に励起できることを示しており,ピエゾ電界はエキシトンの再結合抑制だけでなく,エキシトン流の光変調を可能にすることを意味している.従って,チャネル層に上記歪量子井戸を用いることで,全光型のスイッチング素子が実現するものと期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は以下2項目の研究成果が得られた. 1.光通信帯域に対応したZIONを実現 膜組成のずれとバンドギャップの相関を明らかにした.さらに,プラズマパラメータを制御することにより,膜組成の高精度制御を実現した.これにより,光通信帯域に対応したバンドギャップを有するZIONの実現が期待される.
2. 光信号によるエキシトン流のスイッチング 井戸層にコヒーレント成長したZIONを用いた歪量子井戸では,レーザー光の重畳照射により,光電流が太陽光のみを照射した場合の1.8倍に増加した.一方,井戸層に格子緩和したZIONを用いた無歪量子井戸では,光電流の増加は観測されなかった.これらの結果から,(i)ピエゾ電界によりエキシトンの再結合が抑制され,井戸層に高密度のエキシトンガスが存在する,(ii)エキシトン流の光変調が可能であることが示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究において,エキシトンガスの生成を示唆する結果が得られたが,エキシトンの再結合発光は確認できていない.これはZION膜中の非発光中心である欠陥が高いためと考えられる.先ずこの欠陥密度を低減し,エキシトンの再結合発光を測定する.その後,エキシトン再結合発光の時間分解測定を行い,エキシトンの寿命,移動速度を決定する.また,井戸層幅変調により,ピエゾ電界強度と2次元エキシトンガス濃度及び寿命との相関を明らかにする.ピエゾ電界強度はデバイスシミュレーションにより算出する.
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Research Products
(8 results)