2015 Fiscal Year Annual Research Report
超高速新型トランジスタ実現に向けた新規酸窒化物半導体の創製
Project/Area Number |
14J05011
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松島 宏一 九州大学, システム情報科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | エキシトニックトランジスタ / 酸窒化物半導体 / 真空紫外吸収分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.ラジカル計測に基づく精密な膜組成制御 本研究では,真空紫外吸収分光法によりZnInON成膜雰囲気中のO原子およびN原子密度の絶対密度を計測した.O2/N2流量比を0%から15%まで増加させたとき,N原子密度は2.7×1011 cm-3から9.7×1011 cm-3に増加した.一方,O原子密度はO2/N2流量比に依存せず,4.5×1011 cm-3と一定の値を示していた.プラズマ中の発光分光分析を行ったところ,N原子の生成量は変化していないことが分かった.これらの結果はO原子およびN原子のZnInON膜への取込み量が変化していること示している.この結果をもとにZnInON膜を作製することで化学量論組成のZnInON膜を実現した. 2.臨界膜厚の制御によるZnInONからのフォトルミネッセンス発光の観測 本研究ではZnOテンプレート上に化学量論組成のZnInON膜を作製し,成膜温度がZnInON膜の表面モフォロジーに与える影響を調べた.このとき成膜温度はRT-450℃,膜厚は15-100nmとした.膜厚15nmのZnInON膜では,成膜温度を350℃から450℃まで増加させると,ZnInON膜の表面モフォロジーがステップ-テラス構造から3次元島構造に変化した.膜厚を30nm,100nmまで増加させると,それぞれ250℃,150℃までステップ-テラス構造であり,さらに成膜温度を増加させると3次元島構造に変化した.これらの結果は成膜温度増加によりZnInON膜の臨界膜厚が減少することを示している.これは成膜温度増加により膜内に蓄積される歪エネルギーが増加するためと考えられる.従って低温形成により膜内の歪エネルギーを低減し,より大きな臨界膜厚を実現可能である.このRTで作製した膜厚100nmのZnInON膜のフォトルミネッセンス測定を行い,ZnInONからの発光の観測に初めて成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エキシトニックトランジスタの動作実証のためには,励起レーザによるZnInONからの発光が不可欠である.平成26度は,ZnInON井戸層がZnO障壁層に対してコヒーレント成長している量子井戸では,井戸層内にエキシトンが存在することを示す結果が得られた.しかしながら,量子井戸の層数が少ないため発光強度が弱く,励起レーザによるZnInON井戸層からの発光は確認できなかった.ZnInON井戸層からの発光を観測するため,量子井戸の層数を増加させたが,ZnInON井戸層からの発光は確認できなかった.これはZnInONの化学量論組成(ZnO)x(InN)1-xからのずれにより格子緩和が発生し,非発光中心の欠陥が増加したためであると考えられる.平成27度は,これらの課題を解決し,ZnInONからの発光を観測するため,(i)精密な膜組成制御,(ii) ZnInONがZnOに対してコヒーレント成長する臨界膜厚の制御を行った.その結果,膜厚100nmのコヒーレント成長したZnInON膜のフォトルミネッセンス測定を行い,ZnInONからの発光の観測に初めて成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究において,ZnInONからのフォトルミネッセンス発光の観測に初めて成功した.しかしながら,発光起源の同定には至っていない.まず低温フォトルミネッセンス測定を行い,発光起源の同定を行う.その後,エキシトンの再結合発光を測定し,エキシトン再結合発光の時間分解測定を行い,エキシトンの寿命,移動速度を決定する.また,井戸層幅変調により,ピエゾ電界強度と2次元エキシトンガス濃度及び寿命との相関を明らかにする.ピエゾ電界強度はデバイスシミュレーションにより算出する.その結果をもとに,エキシトニックトランジスタを試作し,室温動作実証を行う.
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Research Products
(7 results)