2014 Fiscal Year Annual Research Report
有機レーザーの実現を目指した機能分離型有機発光トランジスタの開発
Project/Area Number |
14J05025
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 棟智 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 有機半導体レーザー / 有機薄膜トランジスタ / イオンシャワーエッチング / 有機単結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機半導体デバイスはSiデバイスでは実現が困難なインクジェット等の印刷プロセスによる大面積化や低コスト化、低消費電力化が可能なことから、次世代の半導体デバイスとして大きな注目を集めている。特に、有機半導体レーザーは、回路基板における素子間、チップ間の光インタコネクト用の光源として応用が期待されており、大画面ディスプレイ等の大容量の情報伝達が必要とされるデバイスを印刷プロセスで一括して作製できる可能性がある。近年、高電流密度駆動に有利な両極性有機発光トランジスタ(LE-OFET)の有機半導体レーザーへの応用が検討されている。そこで本研究では、LE-OFET上にASE活性な発光層を積層することで、一重項励起子とキャリアを空間的に分離するエネルギー移動型のLE-OFETを提案した。この素子では、有機単結晶においてキャリアの再結合により生じた一重項励起子がASE活性層へエネルギー移動した後発光することで、発光層とキャリア輸送層が分離できると期待される。本研究では光閉じ込めが大きな有機単結晶からASE活性層への効率的なエネルギー移動を実現するため、イオンシャワーエッチング法を用いて有機単結晶の薄膜化を行った。その結果、イオンシャワーエッチング法を用いることで、有機単結晶に対して極めて平坦性の高いエッチング処理が可能であることを明らかにした。また、イオンシャワーエッチング処理によって薄膜化した単結晶を用いて作製した、エネルギー移動型発光トランジスタから良好な発光を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、私は「有機レーザーの実現を目指した機能分離型有機発光トランジスタの開発」というテーマで研究に取り組んだ。当初の研究計画では、有機発光トランジスタのゲート絶縁膜にレーザー活性層を機能分離する予定だったが、実験を進めるうちにゲート絶縁膜でレーザー発振を引き起こすためには非常に厚い膜厚が必要であることが分かった。そこでゲート絶縁膜にレーザー活性層を機能分離するよりも、単結晶トランジスタチャネル上に新たにレーザー活性層を分離する方法を提案し実施した。この方法では、レーザー活性層の膜厚は比較的厚くすることができ、レーザー色素の媒体に絶縁体を用いる必要がないため、厚み自体も減少させることができる。しかしながら、効率的に単結晶層からレーザー活性層へエネルギー移動させるためには、単結晶のキャリア再結合層とレーザー活性層の距離が近いことが必要だった。そこで私は有機単結晶に対してイオンシャワーエッチング法を用いることで薄膜化を行い、レーザー活性層とキャリア再結合層の距離を小さくすることに取り組んだ。研究を進める中で、極めて平坦にエッチング処理できる条件を見出し、薄膜化された有機単結晶を用いて機能分離型トランジスタを作成したところ、レーザー活性層からの発光を確認することに至った。研究計画通りの展開にはならなかったが、新たに生まれた課題に的確に対応し、これまでに報告のない有機単結晶のドライエッチングによるトランジスタチャネルの薄膜化を成功させた。また、世界で初めて、薄膜化した有機単結晶を用いたトランジスタからの発光を観測した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではイオンシャワーエッチング処理によって薄膜化した単結晶を用いて作製したエネルギー移動型発光トランジスタから良好な発光を確認した。しかしながら、薄膜化した単結晶からの100%のエネルギー移動は実現することが出来なかった。これはエッチングにより薄膜化した結晶の膜厚が60 nmであったためにキャリア輸送層とASE活性層の距離が励起子拡散距離よりも大きくなったためであると考えられる。今後は薄膜化の条件をさらに見直し、更に薄膜化した単結晶を素子に用いることで、エネルギー移動効率の向上を図る。この時、これまで用いてきたエッチングガス種依存性や流速依存性、エッチング強度の依存性に注目して検討する。薄膜化によって、再結合の起こるキャリア輸送層とASE活性層の距離が励起子拡散長よりも短くなった場合、エネルギー移動効率は極めて向上すると考えられる。この課題を解決したのち、レーザー活性層への共振器構造の導入に取り組む。具体的な方策として、共振器構造を付与したシリコン基板をレーザー活性層と重ね合わせ、冷間等方圧加圧法を用いて200MPaを超える高圧を印加することでレーザー活性層に共振器構造を付与することを検討する。
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Research Products
(4 results)