2014 Fiscal Year Annual Research Report
シナプス異常を指標とした自閉症原因候補遺伝子の機能的スクリーニング
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14J05094
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 浩旭 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 前頭前野 / シナプス / 電気穿孔法 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉スペクトラム症 (ASD) は遺伝性の強い疾患である。その特徴は、社会相互性障害、コミュニケーション障害、興味限局・常同性である。現在、ASDの中核症状に効果があるものはなく、その病態解明と治療薬の開発は喫緊の課題である。近年、数百のASD関連候補遺伝子が同定されてきている。 しかし、多くのASD関連候補遺伝子がシナプス発達・機能および行動に影響するのかわかっておらず、それらの遺伝子が影響を及ぼす脳領域やASD様行動に重要な脳領域は明らかでないままである。そこで、本研究では、①ASD関連候補遺伝子、シナプス発達・機能、脳領域、行動の因果関係を調べる実験系を開発すること、②この実験系を用いて、遺伝子の役割を同定することを目的とした。 本年度は、目的①のASD関連候補遺伝子、シナプス発達、機能、行動の因果関係を調べる実験系を開発することを検証した。ASD関連候補遺伝子であり、ノックアウトマウスがASD様行動を示すCNTNAP2に着目した。子宮内エレクトロポレーション法を用いて前頭前野の2/3層錐体細胞においてこの遺伝子をノックダウンした。CNTNAP2をノックダウンした内側前頭前野皮質2/3層錐体細胞では、興奮性および抑制性シナプス伝達に異常が観察された。さらに、CNTNAP2ノックダウンマウスでは、社会的相互作用およびコミュニケーションに異常が観察された。本研究によって、前頭前皮質のノックダウン法は、ASD関連候補遺伝子がシナプス機能発達とシナプス機能に果たす役割とその社会的行動への影響を簡便かつ効率的に調べる実験系であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標として、ASD関連候補遺伝子、シナプス発達・機能、脳領域、行動の因果関係を調べる実験系を開発することを掲げた。この目標は達成され、今後、機能未知のASD関連候補遺伝子のシナプス発達・シナプス機能やASD様行動への影響が明らかになることが期待できる。よって、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、この実験系を利用して、ASD関連候補遺伝子であるAHI1遺伝子の役割について検討する。AHI1遺伝子は、シナプス異常を指標にスクリーニングし見出された遺伝子であり、ジュベール症候群の感受性候補遺伝子の一つである。また、CNTNAP2遺伝子と似たシナプス異常を示しており、興奮性シナプス伝達が減少する。まず、このシナプス異常が行動にどのように影響するのか検討するために、行動テストバッテリーを行う。次に、AHI1ノックダウンマウスがASD様行動を示した場合、薬理学的に行動異常の回復を検討する。AHI1をノックダウンした錐体細胞では、興奮性シナプス伝達が減少し、特にAMPA受容体の機能低下が示唆される。よって、AMPA受容体のポジティブアロステリックモジュレーターを投与し、AHI1ノックダウンマウスの社会的行動を検討する。
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Research Products
(3 results)