2014 Fiscal Year Annual Research Report
多階層連結シミュレータによる磁気圏高エネルギー粒子の輸送と加速過程の解明
Project/Area Number |
14J05103
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中山 洋平 京都大学, 生存圏研究所, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 多階層連結シミュレーション / グローバルMHDシミュレーション / テスト粒子シミュレーション / サブストーム / イオン加速輸送問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球は固有磁場(地磁気)を有しており、地球磁気圏を形成している。宇宙電磁擾乱現象が発生すると、地球磁気圏内の高エネルギー粒子が急激に増加し地球を取り囲むように流れる電流(リングカレント)が増大する。この擾乱時のリングカレントの増大は地上送電網に悪影響を与えることから、非常に大きな問題となっており、その増大メカニズムを理解することが求められている。本研究の目的はリングカレントを構成している粒子の加速、輸送を計算機上で再現することで擾乱時のリングカレント増大メカニズムを解明することである。 採用1年目の本年度において、グローバル電磁流体(MHD)シミュレーションで再現された地球周辺の電磁場状況の中で重イオンと呼ばれる酸素イオンがどのように加速されるのかについて明らかにした。これまでサブストームと呼ばれる電磁擾乱が発生すると地球磁場は大きく歪められることがわかっていたが、結果解析により太陽と反対方向の領域では磁力線が北向きではなく、東を向いていることがわかった。さらに東向き磁力線において酸素イオンは急激な加速を受けることを明らかにし、Journal of Geophysical Researchに投稿し出版された。またシミュレーションコードの改良等により超大量(50億個程度)の粒子運動を解くテスト粒子シミュレーションを実現した。そしてテスト粒子シミュレーション結果に位相空間写像法を適用することによって、6次元分布関数の空間分布の時間発展を計算機上で再現することに世界で初めて成功した。また結果解析を行い、高エネルギー粒子は発生過程の異なる二種類の電場によって加速されることで急激に増加するという物理メカニズムを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレーションコードの改良に取り組むことにより、荷電粒子軌道計算時間を大幅に減少させた。その結果、数十億個という大量粒子の軌道計算が可能になり、非常に高い分解能を持つ粒子6次元分布関数の再現に成功している。その結果、宇宙擾乱発生時の酸素イオン加速輸送問題に関わる論文の出版にも至り、研究は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は共同研究先と協力し観測衛星の粒子直接観測で得られる粒子の分布関数データを用いて、本シミュレーション結果との直接比較を行い、本シミュレーションが実際観測される分布関数変動をどれだけ説明することができるのか定量的に評価する。また、シミュレーション結果と観測結果を相補的に用いることで、より現実に近い分布関数変動のシミュレーションを開発する予定である。
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