2014 Fiscal Year Annual Research Report
チタンの熱酸化を利用した光触媒アナターゼ皮膜形成とその生体適合性評価
Project/Area Number |
14J05125
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐渡 翔太 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | アナターゼ / 光触媒活性 / 抗菌性 / 可視光応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.二段階熱酸化法においては、TiCを経由することによりアナターゼ皮膜が安定して形成されることが判明している。しかし、アナターゼ皮膜中の炭素の存在は確認されていなかった。そこでレーザーラマン分光法、XPS、TEMなどにより皮膜のより詳細な分析を行った。ラマンスペクトルおよび電子エネルギー損失分光分析(EELS)によるスペクトルより、アモルファスカーボンの存在が確認され、アナターゼ皮膜中の炭素活量は高いことが示唆された。今後はTEMを用いたアナターゼ/ルチル相の分布の分析や、価電子XPS分析による炭素添加の確認などから、光触媒活性と組織・組成の関係を調査する予定である。 2.光触媒活性の一つである有機物分解能により、TiO2表面での抗菌作用が期待される。二段階熱酸化皮膜における抗菌性を評価するために、JIS R1702を参考として試料サイズに合わせた抗菌性試験方法の確立を行った。二段階熱酸化アナターゼ皮膜において、紫外光照射の下で他のルチル皮膜と比較して生菌率が低くなり、優れた抗菌性を示すことが明らかとなった。 3.1.で述べた通り二段階熱酸化法により作製したアナターゼ皮膜中には炭素が存在することが確認された。炭素添加アナターゼ皮膜は可視光照射下においても光触媒活性を示すことが報告されており、本法の皮膜においても可視光応答性が期待される。そこで、ステアリン酸を塗布した試料表面に、紫外光域の波長をカットした可視光(キセノンランプ)を照射し、水接触角の変化を測定した。二段階熱酸化アナターゼ皮膜においてステアリン酸の分解に伴う水接触角の減少が確認され、可視光応答することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.光触媒活性評価に関してはTiへのMoやNbといった合金元素添加の影響を明らかにした。さらに炭素がなぜアナターゼ相を安定化するのかについて、その構造の類似性と炭素固溶の影響を指摘することが出来た。皮膜の詳細な組成・組織分析に関しては、軽元素である炭素の分析ということもあり難航しているが、ラマン分光法、XPS、TEM-EELSなど様々な手段で分析を行った。 2.光触媒活性と生体適合性の関係解明としては抗菌性評価を行った。試料サイズが小さくJISの評価方法を適用することが難しかったため、シリコンチューブを用いて改良した評価手法を確立した。この手法を用いて二段階アナターゼ皮膜が光触媒活性による抗菌性を示すことを明らかにすることが出来た。 3.ステアリン酸分解能評価により可視光応答性が確認されたことは大きな成果である。TiC粉末を酸化したC-doped TiO2粉末に関しては可視光応答性の報告があるので、本研究で作製した皮膜においても炭素の存在が可視光応答性発現の原因と考察した。しかし、合金元素の添加の影響やアナターゼ分率の影響などは未だ明らかになっておらず今後の課題である。 4.投稿論文の提出ができていないのは至らなかった点である。アナターゼ皮膜の光触媒活性に関するデータの考察が難航し、時間がかかってしまった。現在合金元素添加の影響と光触媒活性に関しての論文を執筆中(日本語版は完成し、英訳中)であり、今年度の早い段階で投稿が可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.二段階熱酸化の改良によりアナターゼ分率を詳細に制御する。アナターゼ相の形成にはTiCとアナターゼ相の結晶構造の類似性が関与しており、炭素サイトに酸素が置換していくことによりアナターゼ相が形成することが考えられる。さらに光触媒活性評価においてアナターゼ相の分率が影響を及ぼすことが明らかとなった。これまでの二段階熱酸化における試料作製では二段階目に大気酸化を施していたが、この酸素雰囲気を制御することによって、より詳細にアナターゼ分率を制御できると予測される。光触媒活性に及ぼすアナターゼ分率の影響を把握するためにもアナターゼ分率の詳細な制御は必要であると考えられる。 2.光触媒活性と生体適合性の関係を解明する。二段階熱酸化法によって作製したアナターゼ皮膜はルチル皮膜と比較して優れた抗菌性を示すことが明らかとなった。しかし、抗菌性に及ぼすアナターゼ分率や合金元素添加および紫外光照射時間の影響は明らかとなっていない。1.により作製したアナターゼ分率の異なる試料における抗菌性を評価することで、最適な条件を調査する。 3.可視光応答性の詳細な評価を行う。二段階熱酸化アナターゼ皮膜は可視光応答性を示すことが明らかとなった。今後はアナターゼ分率や照射光の波長が及ぼす影響を調査していく。また、定量的な評価のために空気浄化性能試験も検討していく。 4.紫外光照射により発生するラジカルを計測する。紫外光照射によって形成した電子や正孔が表面で反応することでOHラジカルが生成することが報告されている。このOHラジカルをESRを用いることで計測し、光触媒活性の定量的な評価を行う。この研究は東北大学歯学研究科庭野教授と共同で行う予定である。
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Research Products
(7 results)