2015 Fiscal Year Annual Research Report
チタンの熱酸化を利用した光触媒アナターゼ皮膜形成とその生体適合性評価
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14J05125
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐渡 翔太 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | アナターゼ / 光触媒活性 / 抗菌性 / アナターゼ分率 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.二段階熱酸化法においては、TiCを経由することによりTi上にアナターゼ皮膜の形成が可能であるが、アナターゼ分率の制御手法は確立されていなかった。そこで、二段階熱酸化条件とアナターゼ分率との関係の調査を行った。二段階目の大気酸化における温度とTiCの残留やアナターゼ分率との関係を把握できた。これによりTiO2皮膜中のアナターゼ分率制御が可能となった。 2.二段階熱酸化により作製されたTiO2皮膜中のアナターゼ分率と光触媒活性との関係は不明であった。そこで、1の情報を基礎としてアナターゼ分率を制御したTiO2皮膜を作製し、紫外線照射下におけるそれらのメチレンブルー分解速度測定を行った。アナターゼ分率が0.8程度の皮膜において分解速度が最大となった。すなわち、アナターゼ単相よりもアナターゼ+ルチル混相TiO2皮膜において優れた光触媒活性を示すことが分かった。加えて、Ti-Nb合金表面に作製したNb固溶TiO2皮膜が優れた光誘起超親水性を発現し、TiO2へのNb添加が光触媒活性に有効であることが示唆された。 3.二段階熱酸化法においてはCOガスを用いた高温(1073 K)での一段階目処理によりTiCを形成している。その後、アナターゼ相を形成するためには低温(773 K程度)での酸化が必要となっており、二段階のプロセスが不可欠である。一段階熱酸化処理によりアナターゼ相を形成するプロセス構築を目的に、TiC源として固体炭素源の利用を検討した。Ti表面でアモルファスカーボンは確認されたが、TiC相の形成には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.H26年度に提出することが出来なかった学術論文をApplied Surface Scienceで公表することが出来た。 2.二段階熱酸化法に関しては、厳密にプロセスを管理することでアナターゼ分率を精微に制御することが可能となった。 3.2で作製したTiO2皮膜を用いて有機物分解能評価を行い、有機物分解能のアナターゼ分率依存性を導出できたことは大きな成果である。 4.これまでは、TiO2皮膜のアナターゼ分率制御が十分機能していなかったため、抗菌性評価の遂行が困難であった。現在は2で述べたとおり、アナターゼ分率の精微な制御が可能になったので、抗菌性のアナターゼ分率依存性を評価できる状況になった。 5.熱酸化法を基礎とした新規なアナターゼ含有TiO2皮膜作製プロセスの検討を行っている。固体炭素源の選定と処理温度の最適化が不可欠である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.Ti上に作製したアナターゼ含有TiO2皮膜の抗菌性評価を行っていく。これまでにJISを参考にした、シリコンチューブを用いた抗菌性評価手法を確立している。この手法によって熱酸化により作製したアナターゼ単相のTiO2皮膜が抗菌性を示すことは明らかになっている。一方、抗菌性とアナターゼ分率の関係は明らかになっていない。H27年度の知見を基礎にアナターゼ分率の異なる試料を作製し、それらの抗菌性を調査する。特に、アナターゼ分率0.8程度のTiO2皮膜の抗菌性に着目する。なお、抗菌性評価プロセスのファインチューニングも併せて行う。 2.TiO2皮膜への紫外光照射時に発生するラジカルを計測する。紫外光照射により形成した電子や正孔が表面で反応することでラジカルが発生する。ESRを用いたラジカル計測手法を採用し、ラジカル発生量の観点から光触媒活性の定量的な評価を行う。この研究は東北大学歯学研究科と共同で行う予定である。 3.1および2と同様の光触媒活性評価を可視光照射下において行う。二段階熱酸化により作製したアナターゼ含有TiO2皮膜は炭素添加により可視光応答化が期待出来る。実際にアナターゼ含有TiO2皮膜において可視光応答光誘起親水性が確認されている。有機物分解能や発生ラジカル量測定においても可視光応答性を示すかどうかを明らかにする。 4.固相炭素源を用いた新規アナターゼ含有TiO2皮膜形成プロセスの検討を継続する。新たな固相炭素源としてグラファイトを用いる。作製した皮膜はRaman分光やXPSにより分析し、アナターゼ相が形成されている場合には光誘起超親水性、有機物分解能および抗菌性の評価を行う。
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Research Products
(8 results)