2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J05139
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
石原 和 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2) (50812038)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 作善 / 渇仰の貴賤 / 民衆宗教 / 如来教 / 身体実践と心 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、民衆宗教の先駆とされる如来教の開教・展開とその意義を、従来の教祖研究、教団研究、教義研究を踏まえつつも、民衆宗教が登場した社会の中から捉え直そうとするものであり、また同時に近代化論の中で近代性を託されながら評価されてきた開教期の民衆宗教に対して、近代自体が問われるようになった現在の研究環境の中での新たな語りを模索する試みでもある。 本年度の研究は、具体的な救済を指向する実践である「作善」をテーマとした。具体的には、如来教のおこった名古屋でこの頃、隆盛を極める開帳や再建工事とそれらに関わる人々の渇仰の様子を猿猴庵の残した日記『金明録』や絵本『嵯峨霊仏開帳志』、『開帳談話』などを用いて明らかにし、その背景としての善書受容の問題をその思想面と永楽屋東四郎などの書肆や大野屋惣八などの貸本屋の目録を用いた流通面から視野に入れつつ、さまざまな救済言説が存在する社会において如来教の救済を検討した。これらの作業を通して、如来教の場合、作善の際にしばしば問題となる金銭などさまざまな理由でそのような実践で救われない人々に対して、社会に受け入れられていた作善(=善をなすこと)による救済から、善心(=心を良くすること)による救済へと重心をずらすことによって、人々の信仰を獲得していったと指摘した。 この研究の過程で、このような救済思想における行為(=身体実践)から心へという重心の変化を、例えば浄土真宗での往生に関する議論、つまり1750年代頃から次第に行と心の一致(三業帰命説)が広がるが、1800年頃に至ると、それは異安心として完全に否定され、むしろ妙好人のような心に注目した救済へと移っていく流れとパラレルなものとして見ることができることに気づいた。このような宗教社会の動きから「心」への注目という現象に焦点を当てることで、民衆宗教と他の宗教の関わりを再検討することを次年度の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の成果をまとめたものとして論文「「渇仰の貴賤」の信仰としての如来教」を執筆し、年度内に投稿したが、査読の結果、改稿の必要が生じ、その作業をしていたため。そして、そのため、予定していたよりも論文発表時期が遅れるため。 また、次の課題として1800年前後の「心」への注目、および在地の信仰(特に講組織の動向)と如来教の関係を検討しようと計画しているが、目論んでいた以上に史料の収集状況が芳しくないため。現在は名所図会や商家史料、農村史料を用いて調査中。
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Strategy for Future Research Activity |
次の課題として1800年前後の「心」への注目、および在地の信仰(特に講組織の動向)と如来教の関係を検討しようと計画している。前者の課題に対しては、心学や曼荼羅とその絵解きなどを史料としたい。そのために、名古屋城下での両者の動向について調査中である。後者については、名古屋城下の仏教、民間信仰の講の史料を収集したい。現状としては、日蓮宗、(少し時期はずれるが)浄土真宗の講に関する史料を収集済みである。今後は秋葉信仰や金毘羅信仰、熱田社関連の講史料を収集したいと思っている。ただし、難航しているので、他の信仰に関する史料があれば、そちらを使うこととしたい。
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Research Products
(8 results)