2014 Fiscal Year Annual Research Report
理想的合意としての絶対知 -現代哲学に対するフィヒテ知識学のインパクト-
Project/Area Number |
14J05156
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
嘉目 道人 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | フィヒテ / 超越論的語用論 / 討議倫理学 / 絶対知 / 真理の合意説 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はフィヒテ知識学の根本概念、特に中期フィヒテの「絶対知」概念を、現代のフィヒテ主義的哲学である超越論的語用論を通じて現代的に解釈することを目的とするものである。フィヒテの言う「絶対我」「絶対知」「絶対者」といった根本概念は、その説明の難解さや抽象性から、現代の哲学的諸理論にとっては殆ど興味の対象外となっている。しかし、現代のフィヒテ主義的哲学である超越論的語用論を経由すれば、フィヒテの立場を現代の真理論や「知識の哲学」の議論状況に即して解釈することができるというのが本研究の見通しである。
今年度は、主として、フィヒテと超越論的語用論を関連付けるための予備的な研究に取り組んだ。(A)フィヒテの『1801/1802年の知識学の叙述』の特に前半の叙述を検討対象の中心に据え、これを扱った二次文献をも参照しつつ、我々が現実的に持つあらゆる知は、その形式として「絶対知」を必要とする、ということを確認した。また(B)現代の真理論および「知識の哲学」についての資料を収集し、特にマイケル・ダメットの言う「実在論」と「反実在論」の対立や、知識についての内在主義と外在主義の対立をめぐる議論の現状把握を行った。これらの検討から、フィヒテの「絶対知」という思想は、真理に関しては反実在論的であり、また知識に関しては内在主義的である、という見通しを得た。しかし「絶対知」は個人が経験的に持つような知ではないため、現代の議論との間にはなおギャップがあることが改めて確認された。(C)そのギャップを埋めるものは、現代のフィヒテ主義的哲学である超越論的語用論が提唱する「真理の合意説」にあると予想される。そこで、アーペルとハーバーマスの合意説を比較検討し、両者は共に「理想的合意」を真理の十分条件ではなく必要条件と考えていることを確認した。 今後は、「絶対知」を「理想的合意」と関連付けつつ研究を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現代の真理論および「知識の哲学」に関する検討は、当初の計画よりも順調に遂行することができ、9月に行った口頭発表において、当初は予定していなかった内容にまで論及することができた。 他方、当初計画では、今年度前半中に「絶対知」概念についての検討を終了し、超越論的語用論における「理想的合意」および両者の関係についての研究に重心を移す予定であった。しかし上記口頭発表により、「絶対知」概念のさらなる検討が必要であることが明らかとなり、来年度以降も当初計画の遂行と並行して検討を継続することになった。 以上を総合的に勘案すると、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
フィヒテについての検討の遅れは、超越論的語用論の検討には影響を与えないが、両者の関係についての検討には大きく影響する。そこで、現代の真理論および「知識の哲学」についての検討を当初よりも早く完了し、フィヒテの検討をより重視することによって、研究全体が遅延することを防ぐ。 これらの変更に合わせて、口頭発表や論文投稿等の予定も当初計画から適宜変更する。
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Research Products
(2 results)