2014 Fiscal Year Annual Research Report
膜の曲率を制御する両親媒性ペプチドの創製:配列効果に基づいた設計原理の樹立と応用
Project/Area Number |
14J05169
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村山 知 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 脂質二重膜 / 両親媒性ペプチド / 膜傷害性 / 曲率誘導ペプチド / 膜透過ペプチド / アルギニンペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
生体膜の局所的な曲率変化は、細胞の形態や膜の物性に広く関与することで注目されている。本研究では、膜を介した多様な細胞機能の操作、メカニズムの解明につながると考えられる、生体膜の曲率を制御するペプチドの創製を目的とする。現在、曲率の形成・維持に関する分子メカニズムとして両親媒性へリックスが主要な役割を果たすことが多く示されているが、配列効果の詳細が明らかでない上、曲率変化の評価法も限られている。そこで、両親媒性へリックスペプチドの配列と曲率誘導能との関係についての包括的な検討、膜曲率変化の定量的な評価法の開発を行い、それらに基づく曲率誘導ペプチドの設計指針の樹立を目指す。 本年度は、既知の曲率誘導・認識機能をもつ両親媒性へリックスペプチドの配列効果、及び膜活性と曲率誘導能との関係について検討を行うことに焦点を置いた。まず、アデノウイルス由来の曲率誘導ペプチドの構造活性相関に取り組んだ。疎水面における脂肪族アミノ酸からフェニルアラニンをはじめとする芳香族アミノ酸に置換した変異体ペプチドを合成し、各種物理化学的アッセイで検討を行った。結果、変異体ペプチドにおいてへリックス性が低下することがわかった。一方で、正曲率誘導性をもつペプチド存在下でアルギニンペプチドの膜透過が促進されるという報告に基づき、アルギニンペプチドの膜透過促進効果と曲率誘導能との関係について検討を行った。人工膜の形態変化を生じることが知られる細胞内小胞形成関連タンパク質の両親媒性へリックス領域7種類を採用し、相当する配列のペプチドをFmoc固相合成して用いた。示差走査型熱量測定によって各ペプチドの曲率誘導性の正負を、共焦点顕微鏡観察によって蛍光標識したアルギニンペプチドの膜透過性促進効果をそれぞれ評価した。結果、正の曲率誘導性を示す配列より、アルギニンペプチドの膜透過促進効果を示す配列が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既知の曲率誘導・認識機能をもつ両親媒性へリックスペプチドをモデル配列として用いた検討により、今後の計画に重要な知見が得られた。正曲率誘導を介した膜傷害性をもつことが知られるアデノウイルス由来の配列を用いた実験では、疎水面における疎水性アミノ酸1残基置換によって二次構造が変化することがわかった。また、各種小胞形成タンパク質由来の配列を用い、アルギニンペプチドの膜透過性促進効果を指標として膜活性を比較検討した。この実験により、脂質のラメラ相から逆ヘキサゴナル相への相転移温度の変化を指標として判定される正または負の曲率誘導能だけでは、膜活性をもたらす曲率制御ペプチドとして不十分であることが示唆された。そこで、ペプチド―膜相互作用による膜物性変化をモニターするために、環境応答型の蛍光プローブを用いた手法を導入した。培養細胞の膜及び人工脂質膜ともに、時間・空間的に定量的な解析ができることが確認できたため、両親媒性ペプチド配列と膜相互作用に関して包括的な検討を行う上で、膜傷害性や膜への挿入の深さなどのアッセイに加えて有用な手法であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
正または負の曲率変化以外で、両親媒性ペプチドと膜との相互作用がもたらす膜物性変化について調べる。環境応答型の蛍光プローブを用い、正の曲率誘導能を示したペプチドのうち、アルギニンペプチドの膜透過促進能を示すものと示さないものとで培養細胞上で比較検討したのち、傾向として見出された膜物性変化を、単純な脂質組成による細胞サイズの人工脂質膜モデル(ジャイアントリポソーム)上で再現する。適当な各物理化学的アッセイによって各ペプチドの結合状態を検討し、それらの結果を総合的に評価することで、ペプチド―膜相互作用様式ともたらされる膜物性変化との関係について知見を得る。また、曲率変化を介した膜物性変化を指標とする、新規評価法の開発に着手する。 一方で、これまで検討に用いてきた両親媒性のモデル配列の特徴を選択条件とし、理想的なαへリックスを仮定した場合に両親媒性をもつ一次配列情報を、ゲノムデータベースから網羅的に得る。その後、由来とするタンパク質の機能も考慮して最適な条件を模索したうえで一次配列情報を分類、優先順位を決めてペプチドを合成し、多様な特徴や性質を含む両親媒性ペプチド配列のライブラリを作製する。以上の段階を踏まえ、異なる膜活性を示す曲率制御ペプチドの設計指針を樹立する。
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Research Products
(7 results)