2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J05235
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
末松 安由美 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | 枯渇効果による結晶化 / 有効ポテンシャル / 相図 / 自由エネルギー / 液体の密度汎関数法 / 熱力学的摂動論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度、私は枯渇効果が結晶化に及ぼす影響を、有効ポテンシャルを用いて調べた。(枯渇効果:大きさの違う要素から構成される系で、より大きい要素の間には小さい要素のエントロピー効果によって実効的な相互作用がはたらく効果。)有効ポテンシャルは、小さい粒子からなる溶媒に沈めた、より大きい粒子間にはたらくエントロピー駆動による相互作用である。特に、大きさの異なる二成分系の大粒子間にはたらく有効ポテンシャルの極小が結晶化に及ぼす影響を調べた。ここで、結晶化する密度の計算には熱力学的摂動論および密度汎関数法と呼ばれる手法を用いた。その結果、粒子の中心部分からの距離rが1<r<1.07d(dは大粒子の直径)の部分の有効ポテンシャルによって、結晶化の挙動が決まることが分かった。この領域の引力が強いと、より低い大粒子密度の液相から高密度の結晶へ転移する。この結果は、このような有効ポテンシャルを実現する小粒子の密度や直径を実験的に調整できれば、低い密度から高い密度の結晶を実験的に得られる可能性を示唆している。 枯渇効果は、多成分系において互いに引力を持たない粒子同士でも、その大きさの違いによって引力が実効的にはたらく効果である。この効果はたんぱく質溶液に高分子を添加することで結晶化させる、といった実用的な応用の可能性を持っている。また、化学反応や生化学の分野ではこの効果が考慮されていない研究もまだ多い。本研究による理論的裏づけは、より多くの分野の人にも知ってもらうことで様々な研究の発展へ寄与する可能性を持っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに枯渇効果による有効ポテンシャルが結晶化に及ぼす影響を明らかにした。特に、二つの異なる有効ポテンシャルを用いた相図の比較から、有効ポテンシャルのどの部分が結晶化に大きな影響を与えるかを明らかにするという大きな目標を達成している。また、自由エネルギーの極小の出現によって転移密度の振る舞いが大きく変化するという発見も得た。この点から、当初の計画よりも詳細な研究ができたと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の年次計画の通り、初年度に枯渇効果による実効ポテンシャルが結晶化に及ぼす影響を調べた。今後はこの結果を論文にまとめて雑誌へ投稿する。また、2年目には当初の計画の通り、これまでの研究に含まれていなかった条件を加えた研究を行う。初年度の研究では、2成分系の小粒子の密度が結晶化の前後で一定であるという仮定をして計算していた。しかし、実際は結晶化の際に大粒子の結晶から小粒子が追い出されて結晶化するために、小粒子の密度は一定でない。これに伴い、有効ポテンシャルも変化する。この効果は従来の研究でも無視されてきた効果だが、その影響は小さくないと考えられる。従って、この効果を含んだ計算を行い、初年度の計算と比較することで、より厳密な枯渇効果による結晶化への影響を明らかにする予定である。
|
Research Products
(3 results)