2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J05318
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菅沼 健太郎 九州大学, 人文科学府, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | 音韻論 / 語種 / 語彙層 / 固有語 / 借用語 / トルコ語 / 現代ウイグル語 / チュルク諸語 |
Outline of Annual Research Achievements |
【内容】トルコ語と現代ウイグル語を対象として、特に固有語と借用語の間の音韻論的な違い(音に関わる現象にみられる違い)に関する調査を行った。そして、得られたデータの分析を通して、トルコ語と現代ウイグル語で音韻論的な語種がいくつあるのかを明らかにした(音韻論的な語種というのは、音韻論的な制約が働くか、働かないか、という基準で区別される語彙グループのことである)。今回の研究で、トルコ語では4つ、現代ウイグル語では3つの音韻論的な語種があることが明らかになった。また、従来、音韻論的な語種にまつわることとして、 1「固有語に働く音韻論的な制約が借用語に働かないことで音韻論的な語種が生じる」 2「借用語に何らかの制約が働かないのは、借用語に、それのもともとの形を維持しようとする力(忠実性の原理)が働くため」 という2点が指摘されており、これらはおおむねトルコ語と現代ウイグル語にも当てはまるが、今回の研究により、トルコ語においては2とは異なり忠実性の原理が関わらないと考えられる部分においても、語種がわかれることが、現代ウイグル語においては、1とは逆に、借用語に働く制約が固有語に働かないことで音韻論的な語種が生じうることが明らかになった。 【意義・重要性】 従来、音韻論的な語種がどのように生じるのかについて、上述の2点(1,2)が指摘されてきた。しかし、今回のトルコ語と現代ウイグル語を対象とした調査により、1と2が当てはまらないような形でも音韻論的な語種が生じうることが明らかになった。これは音韻論的な語種が決してワンパターンな形で形成されるわけではなく、さまざまな形で形成されうることを示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の当初の研究目的は、トルコ語と現代ウイグル語を対象とし、複数の音韻論的な制約の間にみられる強弱関係(どの制約が複数の語種にまたがって働き、どの制約が特定の語種にのみ働くのか)を明らかにすること、さらに、言語間の対照を通してその強弱関係にみられる通言語的特徴を明らかにすることであった。これをなすためには、まず、トルコ語と現代ウイグル語において音韻論的な語種がどのような制約により生じるのかを明らかにする必要がある。本年度の研究は言語調査を通し、それを明らかにすることができたため、おおむね順調に進展したと評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は形態音韻論的な音の交替(※)に関わる制約にのみ着目していた。一方で、非形態音韻論的な部分に関わる制約については扱ってこなかった。ゆえに今後は非形態音韻論的な部分についても着目していく。非形態音韻論的な制約が働くか、働かないかによって音韻論的な語種が分かれているのか否かを明らかにするために、先行研究などでは、音声知覚実験を通した研究が行われている。そのため、今後は先行研究を踏襲し、音声知覚実験を行う予定である。また、日本語などとの対照研究を通じて、制約間の強弱関係にみられる通言語的特徴を明らかにする。
※形態音韻論的交替というのは、ある語が場合によって異なる音形で現れることである。(例えば、「たな(棚)」という言葉は複合語内では「かみだな(神棚)」のように「だな」で現れる。)
|
Research Products
(4 results)