2014 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス応答を惹起するプリン代謝中間体の遺伝生理学的解明
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14J05367
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高木 紘 広島大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | プリン分解代謝 / 環境ストレス適応 / 植物ホルモン / シロイヌナズナ / アラントイン |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに研究代表者らは,ストレス下で蓄積するプリン代謝中間体であるアラントインが,アブシジン酸の新生経路や再生経路を活性化し,シロイヌナズナのストレス適応に関与していることを見出している。しかし,アラントインがどのようにしてアブシジン酸の亢進などのストレス応答の初期過程を惹起しているのか,またその作用は他のストレスホルモンにも及ぶのか等の重要課題は未解明である。
本年度は,遺伝子発現の観点からアラントインの蓄積に端を発するストレスシグナル伝達経路の解析を行い,以下の結果を得た。 1. アラントインを過剰に蓄積するシロイヌナズナ変異株を対象に網羅的な遺伝子発現解析を行ったところ,アブシジン酸のみならずジャスモン酸関連遺伝子の発現量が亢進していた。そこで,植物ホルモン内生量を測定した結果,本変異株は,通常条件下にも関わらず,野生株と比べて,ジャスモン酸内生量が有意に増加していた。そこで,ジャスモン酸生合成に関連する遺伝子を対象に,定量的な発現解析を行ったところ,アラントインを蓄積する変異株では,野生株と比べて発現量が亢進していた。以上の結果から,アラントインの蓄積がアブシジン酸のみならずジャスモン酸生合成を活性化することが示唆された。
2. ジャスモン酸の生合成は,その応答により正のフィードバックを受けることが知られている。すなわち,アラントインの蓄積によるジャスモン酸の生合成の亢進は,ジャスモン酸応答の惹起に起因することが考えられた。そこで,外因性ジャスモン酸の処理によって誘導される根の伸長抑制やアントシアニンの蓄積を指標に,アラントインを蓄積する変異株のジャスモン酸応答を評価した。その結果,本変異株では,野生株と比べて高いジャスモン酸応答が観察された。以上の結果から,アラントインの蓄積により,ジャスモン酸応答が惹起され,それが生合成経路を活性化する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プリン代謝中間体によるストレス応答惹起に係る新知見として,アラントインの蓄積に端を発して,ジャスモン酸の生合成および応答が惹起されることを見出した。この発見は,アラントインがアブシジン酸のみならず,ジャスモン酸の内生量調節に関わる可能性を示すものであり,そのストレス生理作用の理解に重要な知見をもたらすものといえる。アラントインの蓄積がどのようにしてアブシジン酸やジャスモン酸の応答を誘導しているのか,また,これらの内生量調節にどのようなメカニズムが働いているのかは今後の大きな課題であるが,プリン代謝中間体が複数のストレスホルモン応答を惹起することを示した点を鑑みて,本研究は概ね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,アブシジン酸やジャスモン酸の応答惹起など,アラントインの蓄積に端を発するストレスシグナルの伝達に関わる因子の遺伝的な同定に努める。具体的には,アラントイン応答性だと考えられる遺伝子のプロモーター領域とルシフェラーゼ遺伝子との融合コンストラクトを導入したシロイヌナズナ変異株に変異源処理を行い,アラントインの蓄積や投与による蛍光に変化がみられる株を単離する。研究代表者は,すでに当該変異株とアラントインを過剰に蓄積する変異株を掛けあわせた二重変異株を作出しており,これを親株に変異原処理を行い,因子の同定に取り組む予定である。更に,単離した変異株に対して,乾燥などの非生物ストレス耐性試験や,病害摂取などの生物ストレス耐性試験を行い,本シグナル因子のストレス生理学的な重要性についても評価を行う。
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Research Products
(5 results)