2014 Fiscal Year Annual Research Report
核融合炉に適した100kA級高温超伝導体の開発研究
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14J05370
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
寺﨑 義朗 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 高温超伝導 / 核融合マグネット / 単純積層導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は核融合炉に適した100 kA級高温超伝導(HTS)導体の開発研究を行っている。現在提案中の導体は、HTSによる高い冷却安定性とHTS線材を単純積層することによる高い機械特性と製作性が特徴である。しかし、単純積層導体は線材のインダクタンス差などから不均一な電流分布を生じ易いため、導体本来の臨界電流値より低い電流値でクエンチ(早期クエンチ)するRamp Rate Limitation(RRL)の不安定性が起きる可能性がある。報告者はこれまでに30 kA級導体、100 kA級導体を製作し、通電試験を行ってきた。今年度は、100 kA級導体試験を再度行ってデータを充足させるとともに単純積層導体の臨界電流解析コードの構築を行うことで、高い安定性の検証を行った。 今年度行った100 kA級導体試験では、外部磁場の掃引速度を制御することで、100 kAの電流を1時間にわたって、安定に通電することに成功した。これは他のHTS導体と比べても突出した記録となっている。また、導体の臨界電流値を測定した結果、2.8 T, 45 Kにおいて72.6 kA、4.3 T, 45 Kにおいて67.4 kAの臨界電流値が得られた(電場基準:1 μV/cm)。この際、サンプルを1 kA/sのRamp Rateで励磁したにもかかわらず、早期クエンチを起こすことなく臨界電流に到達している。これにより単純積層導体が高い安定性を持つことを実験的に示すことができた。 上記の実験と並行して、導体本来の臨界電流値を評価する臨界電流解析コードを作成した。今回、実際の線材データを基に評価する新たな臨界電流特性評価方法を導入したことにより、解析値と実験値とは5~15%以内で一致した。これにより、臨界電流解析コードの妥当性を示すとともに、これまでに作成した積層導体が早期クエンチを起こしていないことを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに、導体の自己磁場やHTS線材特性の磁場印加角度依存性を考慮したHTS単純積層導体の臨界電流解析コードを開発することができた。交流損失測定実験は行えなかったものの、計画になかった100 kA級導体試験を行い、世界に突出した成果を上げることができた。このため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの成果によって、製作した単純積層導体が早期クエンチを起こしていないことを示すことができた。今後はマグネットが大型化したとき、偏流をどこまで許容できるか、Ramp Rate Limitationの限界はどこにあるのかを検討する。このため、電磁解析と熱解析とを同時に行う連成解析手法を用いて通電特性を評価する数値解析コードの作成を行う。このコードを用いてRamp rate limitationの限界を示すとともに、核融合マグネットに単純積層導体を適用可能であることを示す。
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