2014 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚免疫応答におけるCOX阻害薬の薬理作用の検討およびプロスタノイドの役割の解明
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14J05400
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野々村 優美 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 皮膚免疫反応 / Th1型免疫反応 / Th2型免疫反応 / COX阻害薬 / IL-4 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度の研究実績は主に、(1)Th1型皮膚免疫反応におけるCOX阻害薬の作用の検討、(2)Th2型皮膚免疫反応におけるCOX阻害薬の作用の検討、(3)Th2型皮膚免疫反応を増強する機序の解明 の3つの内容である。 (1)マウス耳介皮膚における接触過敏反応モデルを用い、Th1型皮膚免疫反応に対するCOX阻害薬の作用を検討した。ハプテン塗布群とハプテン+インドメタシン塗布群で比較したところ、後者で有意に皮膚炎が抑制された。これより、Th1型皮膚免疫反応においてCOX阻害薬は炎症を抑制する方向に作用することが示された。 (2)マウス耳介皮膚におけるハプテン反復塗布モデルで、Th2型皮膚免疫反応に対するCOX阻害薬の作用を検討した。ハプテン反復塗布群とハプテン反復塗布+インドメタシン塗布群では、後者で有意に皮膚炎が増強した。また、血清IgE濃度は後者で有意に高かった。以上からCOX阻害薬はTh2型皮膚免疫反応を増強することが示された。 (3)(2)の機序を解明するため、炎症の主座である耳介皮膚の細胞をフローサイトメトリーで解析し、上記2群で比較した。耳介あたりのIL-4産生細胞数が後者で有意に多かった事から、IL-4産生細胞に着目した。近年新しい免疫細胞サブセットとして発見された自然リンパ球2型(Innate Lymphoid Cell, 以下ILC2)は大量のIL-4を産生することで知られているため、COX2阻害薬がTh2型皮膚免疫反応を増強する現象においても、ILC2が関わっている可能性があると考えた。そこでマウス耳介のILC2細胞数を、フローサイトメトリーを用いて、上記2群で比較したところ、ILC2細胞数は後者で有意に多かった。このことから、ILC2がCOX阻害薬によるTh2型免疫反応の増強に関わっている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者はこの1年の間、申請内容である皮膚免疫応答におけるCOX阻害薬の薬理作用およびプロスタノイドの役割について研究を進めた。まず申請者は、COX阻害薬でTh1型皮膚免疫反応が減弱する実験系、およびTh2型皮膚免疫反応が増強することが観察できる実験系を確立した。これによって、COX阻害薬はTh1型反応を抑制する一方でTh2反応を増強することから、COX阻害薬による炎症の増強はTh2型に特異的である事を示すことができた。さらに、COX阻害薬によるTh2型皮膚免疫反応の増強のメカニズムについても研究を深めた。まず、この現象にIL-4産生細胞が関与している事をフローサイトメトリーで定量的に示す事ができた。さらに、この現象にILC2が関与する可能性を見いだした。そのため、申請書に記載した今年度の目標とした研究項目を達成しており、おおむね期待どおり研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
COX阻害薬によるTh2型皮膚免疫反応の増強のメカニズムとして、IL-4産生細胞、特にILC2が関与している可能性を示すことができた。今後はCOX阻害薬がこの現象においてどのような分子メカニズムを介しているのかを詳細に明らかにしたいと考えている。 経皮的な刺激によってTh2型皮膚免疫反応を誘導するこの反復塗布モデルでは、第一に、表皮角化細胞が何らかの重要な役割を果たしていると考えられる。COX阻害薬を塗布することによってIL-4産生細胞、ILC2が病変部皮膚に多く集簇することから、表皮角化細胞がこれらの細胞を遊走させるサイトカイン・ケモカインを産生すること、またCOX阻害薬がその産生を促進していることが推測される。IL-4産生細胞、ILC2の遊走を誘導する、表皮角化細胞由来のサイトカイン、ケモカインを同定し、COX阻害薬によってそのサイトカイン、ケモカイン産生が増強するかを確認したいと考えている。 一方で、COX阻害薬はプロスタグランジン合成を阻害するため、種々のプロスタグランジン受容体を介するシグナルを非特異的に阻害する。どのプロスタノイド(および受容体)がこの現象において最も重要であるかを明らかにする必要がある。今回確立した反復塗布を用いた実験系で、各々のプロスタノイド受容体特異的なアンタゴニストを投与し、どのプロスタノイドおよび状態がもっとも重要であるかを同定することを計画している。
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