2015 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚免疫応答におけるCOX阻害薬の薬理作用の検討およびプロスタノイドの役割の解明
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14J05400
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野々村 優美 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / TSLP / KLK5 / PAR2 / PGE2 / EP2 / インドメタシン |
Outline of Annual Research Achievements |
①COX阻害薬はケラチノサイトのTSLP産生を増強する アトピー性皮膚炎におけるケラチノサイト胸腺間質性リンパ球新生因子(thymic stromal lymphopoietin, TSLP)の過剰産生メカニズムとして、kallikrein 5 (KLK5) が直接proteinase-activated receptor 2 (PAR2)を活性化し、核内因子κB(nuclear factor-kappa B, NF-κB) を介したTSLPの過剰発現が誘導されるという経路が知られる。申請者は、ハプテン反復塗布モデルの耳介皮膚のKLK5およびTSLPのmRNAをリアルタイムPCR法により定量した。KLK5の発現はインドメタシン投与によって増強されず、TSLP産生は有意に増強された。このことから、インドメタシンはKLK5産生には関与せず、PAR2以降の細胞内シグナルに関与する事が示唆された。 ②COX阻害薬によるTSLP産生増強はPGE2-EP2を介する 正常ヒト表皮角化細胞(Normal Human Epidermal Keratinocytes, NHEK)のTSLP産生を培養上清の酵素結合免疫吸着法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay, ELISA)にて定量した。ハプテン刺激でNHEKからのTSLP産生は増加、インドメタシンにより産生はさらに増強された。この実験系にプロスタグランジンE2(PGE2)の受容体である、EP受容体の各サブタイプ(EP1,EP2, EP3, EP4)のantagonistをさらに添加したところ、EP2 antagonistによってハプテン刺激によるTSLP産生は増強され、EP2 agonistによってインドメタシンによるTSLP産生増強作用はキャンセルされた。このことから、インドメタシンによるTSLP産生増強はPGE2-EP2を介していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、申請内容である皮膚免疫応答におけるCOX阻害薬の薬理作用およびプロスタノイドの役割について研究を進めた。昨年度、COX阻害薬によってTh2型皮膚免疫反応が増強することが観察できる実験系を確立し、その現象にILC2という免疫細胞サブセットがかかわっている可能性があることを示した。本年度はさらに、COX阻害薬がケラチノサイトからのTSLP産生を増強し、それがPGE2-EP2を介しているという新たな知見を見いだした。そのため、申請書に記載した今年度の目標とした研究項目を達成しており、おおむね期待どおり研究が進展したと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究から、COX阻害薬はケラチノサイトからのTSLP産生を増強する事を見いだした。またインドメタシンはKLK5産生には関与せず、PAR2以降のシグナルに関与することでケラチノサイトからのTSLP過剰産生を招く事を示した。 本年度は、COX阻害薬がPAR2以降のシグラルにどのように関与するかを明らかにすることを目標としている。具体的には、昨年度の知見をふまえ、アトピー性皮膚炎の皮膚の免疫染色でPAR2の局在を調べ、COX阻害薬の作用点をより詳細に明らかにする。つまり、PAR2の局在が不変ならばそれより下流のシグナルに、PAR2のinternalizationを起こしているならばinternaizationのメカニズムに、PAR2の発現が低下しているならばPAR2の発現メカニズムにフォーカスし、より詳細な作用機序を明らかにする予定である。
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