2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J05426
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 喜行 神戸大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 若年雇用 / ニート / 生活保護 / 市町村合併 / 自然実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
若年無業に関する実証研究を進めるとともに、若年者を含む失業問題や貧困対策に関して共同研究を行った。それらの研究内容と成果は次の通りである。 第1に、若年無業の決定要因に関して研究を行った。具体的には、若年無業の中でもとりわけ、類型別のニート(非求職型・非希望型の若年無業)について集計されたデータを用い、それぞれの状態が経済変数や個人属性からどのように影響を受けるのかを検証した。その結果、賃金水準の低下や所得下位層での格差の増大が、どちらのタイプのニートも増加させていることなど、経済理論からのインプリケーションと整合的な結果が得られた。以上の分析の結果を、論文として取りまとめ、現在投稿中である。 第2に、若年者を含む失業や貧困対策に関して共同研究を行った。 まず、貧困対策に関する研究として、生活保護額の増額が労働供給に及ぼす影響について検証を試みた。ここでは、生活保護額と労働供給に関する内生性に対処するため、地域別の生活保護額に着目し、それが市町村合併に伴って外生的に上昇する状況を自然実験として利用した。市町村パネルデータを用いた計量分析の結果、市町村合併による生活保護額の上昇が被保護率を引き上げること、また、生産年齢の就業率を引き下げるという結果を得た。次年度早々にディスカッションペーパーとしてまとめ、英文ジャーナルに投稿する予定である。 さらに、失業については、欧州諸国の長期失業者の推移や、各国の雇用政策に関して多くの文献をサーベイした。主な結果としては、熟練度の低い労働者や高齢者、外国人労働者といった労働市場で不利な個人が各国で共通して長期失業化していること。また、各国の労働市場制度や政策の違いから、積極的労働市場政策とともに労働市場の柔軟性が長期失業を抑制するとの結果を得た。本研究成果は、論文「欧州の長期失業者の推移と対策」として『日本労働研究雑誌』特集号に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載のテーマに関してはほぼ計画どおりに進んでいる。ニート状態の決定要因に関する研究では、理論仮説と整合的な結果が得られ論文を投稿中であることに加え、当該研究の頑健性を確かめるため、総務省統計局に調査票データの開示を求め、『就業構造基本調査』および、『労働力調査』の調査票データの開示の許可を受けた。現在、データの整理が完了したところである。また、生活保護の労働供給に与える影響に関する研究についても理論仮説と整合的な結果が得られており、論文もほぼ完成している。さらに、唯一計画通りに進まなかったニート期間の継続要因に関する研究も、代替的なデータの入手の目処が立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
総務省統計局より提供された調査票データを用い、ニート状態の決定要因のみならず、生活保護の労働供給への影響についても、より精緻な分析を行い、論文の改訂を試みる。また、ニート期間の継続要因に関する研究について、厚生労働省の『21世紀成年者縦断調査』の調査票データを申請中である。開示があり次第早急に分析を行い、論文の執筆に取り組む予定である。
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Research Products
(1 results)