2014 Fiscal Year Annual Research Report
オルガネラ・ターゲティングを目指した「細胞内薬物送達ナノキャリア」の設計
Project/Area Number |
14J05430
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青山 道彦 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ナノマテリアル / 細胞内DDS / 細胞内動態 / リアルタイムイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ナノマテリアルの物性-細胞内動態・オルガネラ移行能の連関情報を基盤として、オルガネラ、特に細胞核を標的とする細胞内DDSナノキャリアを創成し、細胞内DDSというべき薬物送達法の開発を目指している。当該年度は、初年度として、ナノマテリアルの細胞内動態と物性の連関情報の抽出を試みた。特に、物性の中でも粒子径の違いに着目し、粒子径の異なる粒子の細胞内動態に関して、細胞内局在および細胞内挙動(移動速度や移動方向など)の観点から解析を実施した。 具体的には、直径70 nm、300 nm、1000 nmの粒子径が異なる3種類の非晶質シリカ粒子の細胞内局在を免疫蛍光染色法にて評価した。その結果、多くの粒子がエンドソームに内包される一方で、粒子径が小さくなるにつれ、細胞質および細胞小器官へ移行する割合が増加する傾向が見出された。また、粒子径が大きいほど、多くの粒子が細胞膜近傍の初期/後期エンドソームに内包される一方で、粒子径が小さいほど細胞核近傍のリソソームへ移行し、さらには70 nmの粒子はごくわずかではあるが細胞核への移行が確認された。さらに、リアルタイムイメージングにより、1粒子ごとに細胞内挙動を追跡し、定量的な解析を試みた。その結果、100 nm以上の粒子と比べ、ナノ粒子は細胞内での運動性が高いことを見出した。中でも、能動運動の指標である能動運動速度においては、70 nmの粒子と300 nm、1000 nmの粒子では倍以上の運動速度の差が認められ、粒子径が粒子の細胞内運動において重要な要素であることが示された。 上記の解析結果から、ナノ粒子は高い細胞内運動性を示し、この運動性の向上と同時に細胞核も含める細胞小器官への移行性の向上も認めている。従って、粒子をナノサイズ化することにより、細胞の深部に存在する細胞核を含む細胞小器官への薬物送達を制御し得る可能性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画に従い、物性の中でも特に粒子径に着目し、粒子径の異なる非晶質シリカ粒子を用い、物性-細胞内動態の連関情報の集積を目指したスクリーニングを実施した。具体的には、蛍光物質内封型のシリカ粒子を用い、共焦点顕微鏡による局在解析法と、各種オルガネラマーカーによる免疫染色を組み合わせた、いわゆる蛍光免疫染色により定性的に局在を評価した。さらに、局在情報の収集と並行して、当研究室で確立済である独自の1粒子イメージング技術により、高感度かつリアルタイムにナノマテリアルを含めた粒子の細胞内挙動(移動形態、移動速度など)を解析することで、細胞内での拡散定数や移動速度の定量といった細胞内動態パラメータを算出し、物性との関連性を試みた。 その結果、従来、細胞内移行性において重要だと考えられてきた粒子サイズが細胞内移行後の細胞内動態、即ち、細胞内局在や細胞内挙動にも大きな影響を与えることを見出した。とりわけ、細胞内においてナノサイズの粒子は直線的な運動も含め、非常に素早い運動を示し、かつ細胞質や細胞核などの細胞内オルガネラへの移行性が高いことを見出したことは、細胞内オルガネラ選択的に薬物を送達可能な薬物送達担体の作成において、非常に重要な知見であると考えられる。さらに、現在、粒子径とは異なる物性(表面性状、素材)に関しても粒子を作成済みであり、解析を進めているところである。従って、従来まで不明であった細胞内での運動速度などを含めた細胞内動態を明らかとし、細胞内オルガネラへの移行性の制御に重要な物性を見出したことから、本研究課題は順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実験計画に従い、本年同様により優れた細胞内DDSナノキャリア創製に向けて、ナノマテリアルの物性と細胞内動態・オルガネラ移行能の連関情報の収集を進める予定である。具体的には、表面性状や素材の違いが細胞内動態に及ぼす影響を評価すると共に、今回、オルガネラ移行性に優れることが認められたナノサイズの粒子の中でも特に優れたオルガネラ移行性や素早い細胞内挙動を示す粒子径の有無を評価する予定である。 また、それらの物性と動態の連関情報を基に、表面修飾の最適化などメディシナルケミストリーを適用することで、特定のオルガネラ(第一目標として細胞核)への送達に最適な物性をもつ細胞内DDSナノキャリアを医用工学的に設計する予定である。具体的には、細胞核への移行能に優れた粒子径のナノマテリアルの表面を、さらに種々官能基で修飾することで、表面電荷・親媒性を改変し、細胞核への送達能を向上させ得る細胞内DDSナノキャリアを設計する。そのうえで、創成した細胞内DDSナノキャリアと核酸を最適条件で混合することで複合体を合成し、in vitro、in vivoにおける遺伝子導入効率の評価を通して、細胞核指向性ナノキャリアの遺伝子治療における有効性に関して評価を進める予定である。 また、細胞内DDSナノキャリアの最適設計に加え、細胞内動態が変化するメカニズムに関しても生体内分子、特にナノマテリアルと相互作用することで動態を制御し得ると考えられている蛋白質との相互作用に着目し、解析を進めていく予定である。本メカニズム解明の結果に関しても、細胞内DDSナノキャリアを最適設計する上で重要な知見になるものと期待している。
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Research Products
(5 results)