2014 Fiscal Year Annual Research Report
鉄鋼材料における炭化物析出とオースフォームを融合した新たな加工熱処理法の確立
Project/Area Number |
14J05474
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
知場 三周 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | マルテンサイト変態 / ベイナイト変態 / オキサイドメタラジー / バリアント選択 / 粒内核生成 / 組織微細化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では微細炭化物がオーステナイト相中の変形組織およびその後のマルテンサイト(M)変態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。1年目は析出物および炭化物がMもしくはベイナイト(B)変態に及ぼす影響について調査した. 用いた合金はFe-2Mn-0.2C合金をベース材とし、これにSを添加したMnS材、Vを添加したVC材およびSとVを複合添加したMnS+VC材の4つである。VC材およびMnS+VC材はオーステナイト化処理後、VC析出のための等温保持を1173Kにおいて3.6ks行い、その後焼き入れ、もしくは773K~723Kで種々の時間B変態させた後焼き入れすることでM変態材およびB変態材を作製した。 MnS材、VC材およびMnS+VC材の773KにおけるB変態では粒内核生成による組織微細化に加え、ベース材およびMnS材において観察された旧オーステナイト粒界における粗大な粒界BがVC材およびMnS+VC材では生成が抑制され、組織は微細化した。M変態および723KでのB変態では介在物・析出物の影響を明瞭に観察することはできなかった。 SPEED法を活用したEPMAおよび3DAPにより、介在物・析出物の分布状況および粒界付近のV偏析を調べた。その結果、VCは旧オーステナイト粒界、粒内およびMnS上に析出していることが分かり、また、VはCと共に粒界付近に偏析していることが分かった。 旧オーステナイト粒界から核生成したB組織の結晶学的特徴を明らかにするため、ベース材およびVC材のB変態材(変態初期)の旧オーステナイト粒界において生成したバリアントを解析した。その結果、粒界の粗大B組織はB組織が成長しない側の旧オーステナイト粒に対してもK-S関係になるべく近くなるようなバリアントにより構成されているのに対し、微細な粒界Bとなった組織では、方位差の大きなバリアントも生成することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目は介在物および炭化物がマルテンサイト(M)もしくはベイナイト(B)変態に及ぼす影響について調査した。しかし、当初予定していた微細炭化物NbCはMおよびB変態の組織に影響しない、あるいは影響が小さいことが分かった。そのため、微細炭化物の種類をフェライト変態の粒内核生成の核生成サイトとして実績のあるVCおよびMnSの単独あるいは複合添加鋼を用いて実験を行った。 VC材およびMnS+VC材では粒界における粗大なB組織が抑制され,粒内核生成が起こることで組織が微細化することを確認した。一方でM変態および低温でのB変態に対する明瞭な影響は確認されなかった。 粗大な粒界Bの抑制は粒界上のVC炭化物がB変態の核生成サイトとして働いたため、粒界でのバリアント選択が弱まった結果であると考えるが、一方で直接VCから核生成した事実は今のところ確認していない。これについては追加で調査を行い、母相オーステナイト粒、炭化物およびB組織の方位関係を明らかにする。 上述のように、初年度に予定していた実験はおおむね達成された。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2年目は、オースフォームによる組織変化に及ぼす介在物・析出物の影響を調査する。用いる合金は1年目に粒内核生成および粒界での粗大B抑制が確認されたMnS材、VC材およびMnS+VC材を用いる。また比較材としてベース材も用いる。 VC材およびMnS+VC材はオーステナイト化後、VC析出のための等温保持を1173Kにおいて3.6ks行い、その後未再結晶温度域かつBS点より高温の973Kにおいて圧縮加工(歪速度1s-1、圧縮率~50%)を施す。加工後は速やかに焼き入れることでM変態もしくは773K で種々の時間B変態させる。 実験は光学顕微鏡を用いた組織観察、EBSDによる結晶方位解析、TEMによる微視組織の観察に加え、直接変態前の変形組織を観察するため、室温においてオーステナイト相が安定なモデル合金(Fe-高Mn-C-V-S材)を用意し、SEMおよびTEM観察を行う。機械特性の評価はVickers硬度試験により測定する。 考察では実験結果を踏まえ、変形組織と生成したBおよびM組織の特徴を結晶学的に関連付け、介在物・析出物の有無によりどのように組織が変化するか、また、どのように組織微細化機構が発現するか議論し、工業的な応用が可能な加工熱処理プロセスとして評価を行う。
|
Research Products
(1 results)