2014 Fiscal Year Annual Research Report
デリダ哲学の現代フランス現象学における位置づけの研究--出来事の概念を指標として
Project/Area Number |
14J05556
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長坂 真澄 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 存在神学 / 超越論的理想 / 原事実性 / 可能性 / 現実性 / ハイデガー / カント / レヴィナス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「出来事」の概念に着目して、デリダ哲学を、デリダより一世代若い現代のフランス現象学者たち(ディディエ・フランク、ジャン=リュック・マリオン、マルク・リシール)の思想と対比することにより、デリダ哲学が現代に持ちうる意味について探求するものである。第一年目である本年は、デリダ哲学をフランクの現象学に対照させたほか、第三年目に計画していた研究を先取りし、デリダ哲学とリシールの哲学の突き合わせから見えてくるものをも考察した。 本年度の研究成果としては、以下のことが明確になった。 第一に、フランクの現象学との対比により、デリダが原事実性を、可能性に先立つ現実性として捉えていることが明らかになった。第二に、カントによる超越論的理想批判をフッサール、ハイデガーへと差し向ける、リシール哲学と照らし合わせることで、デリダ哲学が問題としている出来事(可能性に先立つ現実性)の概念は、超越論的理想批判を通してこそ到達されるものであることが明確になった。こうして、デリダの脱構築の概念を、そもそもこの概念の出発点である存在神学批判、超越論的仮象批判として捉えることによって、この概念を一貫性のあるものとして論ずることが可能となった。その際、カントの存在神学批判、超越論的仮象批判を、ハイデガーが独自に鋳造し直していることを、『カントと形而上学の問題』、「存在についてのカントのテーゼ」等のテクストから明示化した。他方で、レヴィナス哲学が、ハイデガーによって換骨奪胎された存在神学批判を、カントのそもそもの問題設定に立ち返らせる試みとして捉えられることを示した。以上により、最終的には、デリダ哲学における出来事の概念を、ハイデガー、レヴィナスを迂回しつつカントの超越論的仮象批判を継承するものとして明確化することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、複数の国際学会において、リシール哲学に関して卓越した先行研究を行っている研究者たちと交流する機会に思いのほか恵まれた。こうした偶然が重なり、本研究が第一年目に予定していた課題だけではなく、第三年度目に予定していた課題、すなわち、デリダとリシールの哲学の突き合わせという課題のための大きなインスピレーションを得、この課題に先行的に着手することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究第一年目の研究により、デリダ哲学をカントの批判哲学の継承として捉えることが可能となった。これを踏まえ、今後は、カント哲学のいかなる点が、現代の現象学において克服すべき問題とされてきたのかを探ることにより、カント以降における現代の存在神学批判の中で、デリダの思想を位置づける作業に着手する。その目的のため、本研究が第二年目に計画していた、デリダとマリオンの思想の突き合わせを行う。というのも、マリオンはカントにおける超越論的統覚の批判を通してこそ、自らの出来事の概念を発展させるからである。
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Research Products
(16 results)